Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

アクセラレーターはベンチャーの成長にとって有効なのか?

この夏に卒業予定の米国の博士学生がまとめた「アクセラレータのベンチャーへのインパクト」をまとめた論文をご紹介します。

 

How Do Accelerators Impact the Performance of High-Technology Ventures? by Sandy Yu :: SSRN

 

アクセラレータに参加するベンチャー企業は、同程度のクオリティのアクセラレータに参加しなかったベンチャー企業に比較して、ベンチャーキャピタルから得る資金が少額で、より早く廃業する傾向にある。

メカニズムとしては、以下の二つの理由によるもの。

  • アクセラレータに参加するベンチャー企業というのは、どちらかというと経験が不足しているベンチャーである。
  • アクセラレーターへのフィードバックは、可能性のない事業プランをより早い段階で明確にするので、廃業の意思決定が早くなるし、無駄な投資もいらない。

アクセラレーターは失敗を加速する機能を持っているとすると、人材の流動性が高まるし、ベンチャーキャピタルからすると出資の効率性が高まるし、とっても大事な役割を果たしているし、アクセラレーターが直接的に、成功確率を高めてる訳ではない、というところがとても面白い視点だと思います。

この論文、アクセラレーターの本質をとっても良く分析していると思います。研究手法としては、荒削りなところもあるのだけれども、とっても面白い現象をとても面白い切り口でまとめていると思います。今年の米国のjob marketの中で、一番話題になってそうな感じがします。要は研究者新卒マーケットで話題になるってことは、その年の米国のこの分野の新卒の中でもっとも優れた若手研究者、みたいなイメージだと思います。

ベンチャーとかを研究していると、こういう切り口とデータセットの集め方が大事だな、って改めて思います。海外留学しようとしてる人は、博士卒業までにどんな研究がまとまっていないといけないかというイメージをつかむ意味でもとても良いと思う。

シンガポール国立大学から学んだこと

はじめに

1月中旬にシンガポール国立大学の研修に参加させていただきました。今回のシンガポール滞在、とても有意義でした。大学トップマネジメント研修@シンガポール国立大学(NUS)から学んだことが沢山あります。どうして、NUSがグローバルランキングで、東大を抜いてアジアで首位になったかが良く分かります。
もちろん片側ではシンガポール政府からの潤沢な資金がNUSに投入されていることは確か。日本の大学ができたらいいな、と思っていることをNUSが実現できているのは、政府からの資金援助があるからであることは間違いありません。
でももう一方で、資金以外にも、NUSがグローバルな環境の中で、厳しい競争に自らを追い込んでいることも確かです。僕は最近大学のマネジメントに最も大事なことを一つだけ上げろと言われたら、それは"resilience"だと思っています。つまり激変する外部環境に中で大学が、痛みがある中でもしなやかに新しい環境に適応していくというメカニズムです。大学という組織は硬直性があったらその時点で、大学の役割を果たせなくなります。だって、これだけ社会環境の変化が激しい中で、大学が社会の変化より遅かったら、未来に役立つ人材の育成なんてできないから。

 

"Resilience"が成り立つための仕組み

その"resilience"が成り立つための仕組み、今回学長やプロボスト、その他色々な分野の副学長と直接話す機会の中でヒントを沢山いただきました。
資金以外で大学において大事だと思ったことは、以下の通り。

  1. 大学の教員採用は世界でトップレベルの人材を採用する。現状NUSはNUSで博士を取得した教員が採用されることはほぼないそうです。NUSのらキングがどんどん上がっていくので、世界から優秀な人材が応募してくる。そうすると、NUSが博士をとった人ではその応募者の競争では勝ち残れないそうです。現在、教員の9割くらいが、米国か欧州(特にイギリス)で博士を取得した人だそうです。確かに、その大学の出身者が多く採用される大学というのは逆にいうと、その大学より reputationの高い大学の出身者が応募するほどの魅力がないということなんだと思います。その大学の出身者の比率の高い大学にはおそらく未来がないのだろうと思います。きちんとグローバルな厳しい競争の輪にその大学が参加できてるかどうかは、resilienceの前提条件だと思います。
  2. 教員が定年で退任したら、その教員の枠は学部ではなく、学長& Provost預かりになるそうです。その学部は、どんな教員を雇うかという明確なプランを示さなければ、学長 & provostはその枠を取り上げて、違うもっと重要な学部に割り当てるそうです。こうすることによって、重要な学部に人材が集まるようになる。また既存学部は次の時代に必要な人材は何かを考えてリクルートするようになる。ちなみに20年くらいで全体の3分の1をリプレースすることができて、その運用は学部ではなく学長とprovostがリーダーシップを持つことができる。日本の一部の大学のように、退任した人と同じ分野の人を採用するという仕組みでは、当然時代にあった学部への変革はできません。これもreslienceにおいてとても重要。
  3. 学部の教員構成で、若い人の比率が重要とのことです。NUSもそこまで実現できてないけれども、理想は50%くらいを、tenure-trackのAssitant Professorにすることだそうです。Tenureを持っている教員やシニアな教員は常に保守的になる。そういう人は、外部環境に対応することはできないことが多く、それができるのは若手だけ。日本の大学の年齢構成は、どんどん高年齢化していく一方です。社会に役立つ大学は、若手教員が半数いること。これはその通りと思いました。
  4. 教育は大学の根幹。授業がちゃんとできない教員にプレッシャーをかけることが大事だそうです。毎年の学生の授業評価で、全体の下位5%(最近は10%にあげようとしてる)は、ブラックリスト化して、副学長レベルで常に監視しながら、改善を求めていくそうです。tenureとった後も、このようなプレッシャーがあるかないかはとても大切です。

と、今回学んだことの一部をまとめてみました。予算に頼るばかりではなくて、大学としてこのような制度を導入することができて、初めて社会から信頼される大学になるのではないか、と思います。でも現実的には、なかなか日本の風土には合わないものも多い気がします。

大学生の留学のインパク

先日NUSで聞いて面白かったものの一つは、大学生が留学した場合に、その後どんな効果があるかを定量的に分析したものです。内生性 (Endogeneity) はpronpensity score matchingで対応しようとしています。
ざっくりいうと、NUSの留学プログラムで1年留学すると、就職後の月収が平均で$190上がるという結果でした。留学先は、米国、中国、英国の順でより効果がでかいとのこと。所属学部を見ると、ビジネス、社会科学、自然科学の順番で効果が大きいそうです。
なお、新しい仕事を見つける時間が短縮するなどの効果はないそうです。またGPAの向上も見られるもののインパクトはとても小さいとのこと。
日本でこういう分析をやろうとしても、日本の大企業に就職すると初任給はそんなに差がでないので有意な差はでないような気がします。日本の学生は、海外留学するとより就活の時間が短くなったり、成績があがったり、という効果はあるのでしょうか。やっぱり他の学生と違う経験をした学生がより良いキャリアを歩めるような人材マーケットはとても大切だと思っています。
こんな風に教育プログラムを評価していくことは日本においてもとても大事だと思います。

http://www.nus.edu.sg/global/docs/The%20Impact%20of%20Study%20Abroad%20on%20Graduates'%20Earnings%2027%20Dec%202016.pdf

 

Centre for Future-Ready Graduates

NUSには、Centre for Future-Ready Graduatesというセンターがあるそうです。これは他の大学でいうところの、キャリアセンターを改組したものだとのこと。

キャリアセンターというと、卒業前になって、学生が就活するときに相談する場所。でも本当に大事なのは、大学1年生で入学したときに、キャリアのことや、今の21世紀型の労働市場において、大学でどんなことを学ぶべきかを考えること。というわけで、大学1年生からスタートするキャリア支援をやっているそうです。
特に去年くらいからは、全1年生必修の"Roots and Wings"というワークショップを単位つきでやっているそうです。
このワークショップで、以下の4つの力を養っていくとのこと。

Aims of the Programme - 4 Main Outcomes

  1. Focus - Reduce distractibility, manage stress, lengthen attention span
  2. Self Awareness - Of personality traits, strengths & challenges
  3. Interpersonal Awareness & Effectiveness - Collaboration, conflict resolution & empathic conversations
  4. Personal Vision - Define & articulate goals and vision statement

このプログラムを通じて、自分に自信を持ったり、ストレスへの対応法を学んだり、ResilienceやEmpathyなどの今の時代に必要な能力を養っていくとのこと。
このワークショップの教材もシェアしてもらうようにお願いしてきましたが、かなり良くできているプログラムだと思います。
日本の大学でもぜひこういう力を養っていける場が欲しい。僕が昔慶應の頃にアントレプレナーシップの教育で教えたいことをもう少し一般化するとこういうプログラムになるんだろうと思います。

 

2017 Kauffman Dissertation Fellowship

2017 Kauffman Dissertation Fellowshipが発表されました。毎年、米国の大学に所属する学生で、アントレプレナーシップ分野の研究をしている人の博士論文に研究費を助成する制度です。僕は2回ほど応募したことがあるのですが、残念ながら採択されませんでした。

 

www.kauffman.org

 

この受賞者の中から毎年米国のJob Marketにおいて話題になるような論文が生まれています。このメンバーの研究をフォローすることで、最近のトレンドを追うことができます。受賞者は以下のサイトから参照することができます。

http://www.kauffman.org/microsites/kdf/kauffman-dissertation-fellows

 

 

あけましておめでとうございます: 2017年の目標「国際共著論文の量産」

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皆様、あけましておめでとうございます。今回の年末年始は、年末まで仕事をしていて、年始からも仕事に追われています。

毎年新年に目標を立てています。ちなみに2016年の目標は「本を出版する」でした。この目標まだ完全には達成できてないのですが、授業の内容をもとに本にまとめたいということで、目次案を作り、ある程度執筆を始めています。もう少しgestationの期間が必要かと思いますが、今2016年の目標をきっかけとして、実際に達成したいと思っています。

さて、今年の目標ですが、研究者としての思いに原点回帰して「国際共著論文を量産する」ということにしたいと思っています。私自身、博士時代からスタートした研究でまだrevise中のワーキングペーパーを何本か抱えています。これを少しでも早くpublishしたいです。また最近は海外の研究者からも共著論文のお誘いをいただくことも増えています。国内での研究プロジェクトも色々と立ち上がりつつあります。そういったことをきちんと論文にまとめていきたいです。

なお私がとてもこだわっているのは、「国際」共著論文です。同じ国の人だけではなくて、海外の研究者の論文を一緒に書くと、研究スタイルの違い、研究コミュニティの違いから出てくる引用論文の違いなど、色々なことを学ぶ機会になります。この経験を今年はさらに積んでいきたいと思います。日本にいるとつい日本の研究者コミュニティに影響されてしまいます。日本語で論文書くお誘いもいただきます。でも、今の自分にとって大事なのは、海外の研究者から自分の存在が忘れられないこと。日本にいると、どうしても内向きな研究をするようになってしまうので、あえて「国際」共著論文を最優先する1年にしたいと思っています。

ところで、昨年1年間の活動を振り返ってみますと、どうしても研究に割く時間の割合が少なくなっています。日本に戻ってきて、色々な研究以外のプロジェクトに割く時間が増えています。そんな訳で、私が時間を割くプロジェクトについてはもう少し戦略的にしていきたいと思っています。

そんな中でも特にしっかり見直していきたいのが、サンディエゴに関連するプロジェクトです。サンディエゴと日本の関係において、私が関わっているプロジェクトが多数あります。それらのプロジェクトは、色々とインパクトのある大きなプロジェクトになりつつあります。一方で私が調整のために割いている時間もどんどん増えています。

イノベーションの誘発において大事なのは、誰か特定のゲートウェイが存在することではなく、何かやりたいことをある人がend to endで直接プロジェクトチームを組むことだと思っています。ゲートウェイが入ることによって、プロジェクトのクオリティが下がることが多々あります。ちょっと私がいることによって、全体のクオリティが下がってしまうことを感じるときもあり、今よりももっと分散的に、私が関わらないで(良くも悪くも私がスルーされるような)もまわっていく状態を作っていきたいと思います。サンディエゴと日本に関連するハブ機能がちょっと私に集中しすぎていることは大きな問題だと思っています。

私は、自分が専門とする分野で専門家の知見を求められたときにはぜひ貢献できるような人材でありたいです。でも、ネットワークのハブだからという理由で、自分の価値を出していくような人材にはなりたくない。サンディエゴには、「自分が日本とサンディエゴの関係を代表している」と自負している人たちが複数います。僕自身は、「日本とサンディエゴ」以外にも自分の強みが色々あるので、あまり拘りは強くありませんが、サンディエゴと日本の関係のキーパーソンであることを自分の売りにしている人たちもいます。そうすると、色々な人が、日本とサンディエゴに関連するプロジェクトについて、声をかける順番を気遣うような状態になっていきます。でもそれはある種の既得権益が発生しているだけで、プロジェクトのクオリティが低下する要因となっています。私自身がそういった立場から離れて、自分の専門とすることだけに特化していくことはとても大切と思っています。私を含めて今までサンディエゴと日本の関係に関わってきた人の「既得権益」が健全な形で打破されて、新しいプロジェクトがたくさん生まれるような仕掛けを考えていきたいと思います。やはり政治的なパワーよりも、マーケット・バリューを作り出していくことの方がはるかに大切だと思うのです。

そんな訳で、今年は「国際共著論文」を中心に、サンディエゴ関連のプロジェクトの整理も含めて、自分の専門性を活かすことのできるプロジェクトに絞って、活動をしていきたいと思っております。

改めまして、よろしくお願いします。

 

ちなみに、今までの毎年の目標は以下の通りです。ご参考までに。達成できたものもできてないものも色々です。

 

2016年 「本を出版する」

2015年 「腹回りのダイエット」

2014年 「博士のマーケットに出て、ポジションを得る」

2013年 「アメリカのアカデミアのスピード感の中で猛烈に研究する」

2012年 「アメリカのアカデミアにおいて実績を出す」

2011年 「ワークライフバランスを身につける」

2010年 「自分にとってのディシプリンプリンシパルを身につける」

2009年 「海外進出」

2008年 「博士取得に専念」

2007年 「組織としてのマネジメントを学ぶ」

2006年 「マネジメントにおけるリーダーシップを身につける」

2005年 「多数の学会発表、論文の執筆を行う」

2004年 「ネットワーキング理論に強くなる」

2003年 「財務に強くなる」

2002年 「意思決定における公平性を身につける」

2016年を振り返って

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皆様、今年1年も大変お世話になり、ありがとうございました。毎年、年末にその年の1年間を振り返って、10大ニュースをまとめています。今年も色々なことがあった1年でした。新しい環境の中で、とっても素敵な出会いがたくさんあって、特に新しい環境において、快く迎えて下さった皆様に深く感謝しております。最近、活動の幅が広がっていくと、今まで以上に多くの皆様にご迷惑をおかけすることも増えていて、反省が多い1年でもありました。

 

1. 日本帰国

今年最大の変化は何と言っても5年半住んだアメリカを離れて、日本に戻ってきたことだと思います。進路を決めるにあたっては、米国にもう少し残るか日本に戻るか、日本に戻る場合にはどういった形か、ということを最後の最後まで本当に悩みました。幸いなことに、いくつもの選択肢をいただいて、色々悩み、色々な方にご相談して結論を出しました。

日本に戻ってきて、自分がうまくやっていけるか不安があったのですが、思った以上に日本での生活も楽しいです。ただ、海外で頑張っていた頃の迫力が自分になくなっているという危機感も持っています。今海外で頑張ってる人と会うと、自分から「現役感」が失われていると感じることもあります。引き続き、気を引き締めて頑張っていかないといけないと思っています。

今回の帰国では、飛行機のアップグレードして、ちょっと贅沢して帰ってきました。

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2. GRIPS助教授就任 / 研究室運用開始

今年の4月から政策研究大学院大学(GRIPS)の助教授になりました。慶應にいた頃も助手や助教をやっていたので、faculty positionは初めてではなく、自分の中では教員に戻ったという気分の方が強いです。ただ、はじめての国立大学で、教員としても独立して研究をしていく立場(米国でいえばPIになれるポジション)なので、新しい挑戦も沢山あります。

六本木の一等地のキャンパスで、とても広い個人研究室をいただきました。最初は広く感じていたのですが、家具や荷物がどんどん増えて、最近は随分汚なくなってしまっていますが。

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3. 授業「科学技術とアントレプレナーシップ

GRIPSで「科学技術とアントレプレナーシップ」という授業を担当しています。この授業は新規の授業で、私にとってもシラバス含めて授業構成をゼロから作るということで新しい挑戦です。この授業は私が専門としている研究分野と直結しているということで、本当に力を入れて授業準備をしました。この授業内容は本にもまとめたいと思っています。また授業には様々な方々が聴講でいらして下さって、この分野のコミュニティも生まれつつあります。

 

4. UC San Diego客員助教授&授業

日本に戻るにあたってどうしても嫌だったのが8月の東京の暑さ。とてもsurviveする自信がありませんでした。そんな中で、UC San Diegoで今まで教えていた授業を日本に戻ってからも継続して教えるお話をいただきました。本務先の了解も得て、夏学期はサンディエゴに住んで、引き続きビジネススクールで授業を担当しています。僕にとっては、日本に戻っても米国で教えられるチャンスは貴重で、これからも大事にしていきたいと思います。ちなみに今までは、「講師」として教えていたのですが、本務先で助教授ポジションについたことに伴い、UC San Diegoでのポジションも客員助教授となりました。日米両方で、これからも頑張っていきたいと思います。

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5. 博士学位授与式

博士を取得したのは昨年でしたが、博士の学位授与式には出ていなかったので、この6月にサンディエゴに行って、参加してきました。レガリアもレンタルではなく購入しました。今後日本でも卒業式で必要に応じて着たいなと思っています。

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6. SciREXコミュニティとの出会い / サマーキャンプ

日本では、科学技術政策の研究をしたいと思っていました。GRIPSは、SciREX (「科学技術イノベーション政策のための科学」)事業の総合拠点でもあります。GRIPS以外にも、東大、一橋、京大・阪大、九大の5拠点、6大学が相互に連携しています。このコミュニティに参加するようになって、他分野の方々と連携することが増えて、とっても刺激的です。特に各拠点の若手からミッドキャリアの研究者に優秀な人が沢山集まっていて、今後も一緒に研究していきたい人が沢山います。SciREX事業は、どんな形でグローバル性を高めていくか、研究・教育の水準をあげていくかといった課題はあるものの、今では僕にとってはすっかり愛着のあるコミュニティになっています。これからもこのコミュニティの発展に貢献していきたいと思います。

ところで、今年は一橋が幹事校であったサマーキャンプに運営メンバーとしても参加したのですが、この場がとっても楽しく、それがこのコミュニティに愛着を持つ大きなきっかけとなりました。

 

7. SFC中高つながり再び

最近すっかりご無沙汰していた母校である慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部(SFC中高)との関係が再び深まった1年でもありました。シリコンバレーにいる間に、SFC中高の後輩が色々な形でサポートしてくれたことは、母校への愛着を思い出すことのきっかけでした。そして何より、今年の1月にSFC中高教諭の尾上さん他がスタンフォードに視察で来訪して、色々なアポイントのコーディネートをお手伝いしました。これからの学校の新しい形を探っていくための視察です。その過程で、学校の未来のあり方、教育やカリキュラムのあり方などを先生方と議論する機会が沢山ありました。そして日本に戻ってからもそういった議論が続いています。

僕にとって、SFC中高の未来を議論の輪に参加することは、母校への貢献としてやりたいことの一つです。そして中高の教育のあり方を考えるということは必然的に、未来社会がどうなっているかを考えていくという思考訓練でもあり、SFC中高のためだけではなく、自分の様々な活動においてもとても大事な思考の土台となっています。

1月にSFC中高卒業生@シリコンバレーの交流会から始まり、色々な先生方と交流したり、SFC中高卒業生@六本木勤務者の交流会をやったり、卒業生の公演にいったり、本当に母校の卒業生・教員と関わることの多い1年間だったと思います。

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8. 大学トップマネジメント研修

GRIPSでのプロジェクトとして、「大学トップマネジメント研修」に携わっています。これはサンディエゴにいた頃から少しづつ準備してきたもので、今年度ようやく形になりました。僕は、この研修の中でも「サンディエゴ研修」の責任者をしています。

「大学トップマネジメント研修」は一言でいうと、日本の未来の大学の経営者を育てるプログラムです。日本の大学は、色々な制度改革をしたけれども、まだまだ経営人材が足りないという問題意識が発端です。1年以上前に、UC San Diegoで海外研修を受けられるかと相談されたときに、色々悩んだのですが、UC San Diegoで30年近く地域連携担当の副学長をやっていたMary Walshokにコーディネートしてもらえるのであれば、UC San Diegoでやる意味があると思って、何ができるか動き始めました。

そんな訳で、昨年から仕込みを初めて、今年も夏のサンディエゴ滞在中はこのプログラムの中身をつめるミーティングを毎週のように行うなど、かなりのパワーを割いてきました。ようやくこのプログラムも形になりつつあります。

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9. 日米の架け橋としての仕事

日本に戻ってきても、サンディエゴやシリコンバレーとの架け橋になるような仕事をしています。7月にはUC San Diegoの東京オフィスが開設しましたが、その側面サポートを色々な形でしてきました。11月にはStanford APARCの日本でのalumniのイベントをローカルホストとしてorganizeして、ネットワーク強化に努めました。その他、UC DavisのMartin Kenney氏、UC San DiegoのMary Walshok氏など、私が米国時代に交流の深かった方々が日本にいらした際に、こちらでのローカルホスト役などを務めています。

今まで仕掛けてきた日米連携が色々な形で具現化した1年でもありましたので、来年は更に発展させていきたいと思います。

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10. 宮井克己さんのご逝去

サンディエゴでずっとメンター的にお世話になっていたUC San Diegoの医学部名誉教授の宮井克己さんが癌になられたということを7月にお聞きしました。本当は8月のサンディエゴ滞在中には、宮井さんの研究室に遊びにいって飲みながら色々お話させていただくつもりだったのですが。。8月の滞在中にご自宅にお伺いして二人切りでゆっくりお話させていただく時間をいただきました。そして、この11月にサンディエゴにて亡くなられた、というご連絡をいただきました。

僕は宮井さんから学んだことが沢山あります。サンディエゴで辛いときも、宮井さんのようなダイナミックな人生を過ごされた方が近くにいたことはとても大きな精神的な支えでした。亡くなられた後に改めて宮井さんの存在の大きさをかみしめています。

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おまけ1: ドローン

この夏のサンディエゴ滞在中に新しいことをやりたいなと思って、ドローンを購入して操縦できるようになりました。3D Robotics + GoProというサンディエゴ関連ベンチャーの組み合わせです。

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おまけ2:  自作ビール

この夏のサンディエゴ滞在中に新しいことをやりたいなと思って、自家製ビールを作りました。結構おいしくできた。"Miramar"となずけました。 

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Farewell in Silicon Valley - March, 2016 ご挨拶

3月25日に、Silicon Valleyの皆様にfarewellを開催していただき、たくさんの皆様にご参加いただきました。その際のご挨拶をまとめました。

 

はじめに
まず初めに幹事のお二人に御礼申し上げます。実は今回、何人かの方からお別れ会をと声をかけていただいたのですが、そういった会がいくつも乱立すると日程的に大変なのと、なるべく一つに統合すると、皆様にとっても良い交流の場になるのではないかと思いました。田内君はSFC中高の後輩で、この半年間もっとも良く飲んだ仲でしたし、一番無理をお願いできる、ということでお願いしました。そしてもう一人の笹井さんはStanford APARCでご一緒させていただいていて、シリコンバレーに広い人脈をお持ちなので、ぜひと思いご協力をお願いさせていただきました。


シリコンバレーとのご縁
僕が今回シリコンバレーに住んだのは半年なのですが、なんでこんなに色々な人とネットワークが広いのか、という質問を良くいただきました。これにはいくつかの経緯があります。
まずサンフランシスコという町は祖父母が60年前に住んでいた場所です。60年前というと、シリコンバレーがまだシリコンバレーが呼ばれる前の時代です。街中には昔祖父母が住んでいた家やらオフィスやら叔母が通っていた学校などがあります。そして叔母がサンフランシスコに永住している関係で、子供の頃から毎年夏はサンフランシスコに呼んでもらっていました。だから例えば子供の頃に何度も連れて行ってもらった遊園地がGreat Americaだったりします。そんな訳で、子供の頃からとっても慣れ親しんでいるのがベイエリアでした。
そして、慶應義塾大学の助手として大学のインキュベーションの仕事をするようになってからは、毎年数回はシリコンバレーを訪れていました。特に本日いらして下さっている大澤さんには2002年にシンガポールでお会いして以来、シリコンバレーで色々な方をご紹介下さって、僕のネットワークを広げて下さいました。
2004年にはJTPA主催のシリコンバレーツアーが開催され、僕は第1回の参加者でした。そのツアーは今日いらして下さっている村山さんの大変なご尽力で立ち上がったものですが、そのツアーでは当時のシリコンバレーのオールスターの皆様が講師をして下さって、シリコンバレーのことを深く学ぶ大変良い機会でした。自分にとってのシリコンバレーに原点はこのツアーだったようにも思います。
2010年に渡米して、サイエンスベースのインキュベーションを学びたいと思い、指導教員のご縁でUC San Diegoに移りました。ここで5年間の博士課程を経て、日本に戻る前に、スタンフォードシリコンバレーにて仕事をしたいと思ったときに、以前UC San Diegoにいらした星先生にご相談して、こちらに移る機会をいただきました。
スタンフォードでは、半年間、星先生、櫛田さんにお世話になりながら、Stanford Silicon Valley New Japan Projectのコアメンバーとして活動してきました。
という経緯でしたので、実際にはシリコンバレーに半年前に来たというよりは、半年前にシリコンバレーに戻ってきたという感覚でした。


スタンフォードでの役割
今回のスタンフォードでの雇用は、初めから半年という前提でした。一般論として、半年だけの雇用というのは例外といえば例外のように思います。相互にとってメリットが少ないので。
どうしてこのような形で受け入れていただけたかというと、星先生のご意向として、僕が今後日本に戻っても、Stanford APARCと共同研究できる人がいた方がいいので、この半年間で、こちらの環境を理解し、連携する体制を準備しておいて欲しい、とのことでした。
この半年間はそのための土台作りということで、とにかく色々な方とお会いして、今後の連携のご相談をさせていただいてきました。
実際に、この半年間で、シリコンバレーとの共同研究・共同プロジェクトについて色々な可能性が膨らみました。APARCとのサイエンスポリシー・イノベーションポリシーの評価のプロジェクト、教育政策に関するプロジェクト、Entrepreneurial Universityの評価プロジェクト、デザイン思考とポリシーなどなど。池野さんとの出会いで、Bio Designとビジネス化についてどんな貢献ができそうかご相談させていただいています。桝本さん・赤間さんが進めていらっしゃるSilicon Valley Japan Universityにも自分が貢献できることがないかと思っています。また、APARCの日本のOB/OGのとりまとめもしていきたいですし、その他こちらで出会った多くの方々とご一緒したいことがたくさんあります。


今後、日本にて
4月からは日本のポリシースクールにて、「科学技術とアントレプレナーシップ」という政策の授業を教えます。その後、ビジネススクールに移って、「テクノロジーマネジメント」の授業を担当します。それと同時に、UC San Diegoの客員助教授を兼務して、8月にはUC San Diegoでも授業を持ちます。ですので、シリコンバレーの皆様にはぜひ8月にサンディエゴに遊びにいらしていただければ、と思っています。色々な場所ご案内しますし、シリコンバレーとサンディエゴのエコシステムがつながる良いチャンスとも思っています。
そして最後に、Stanford Silicon Valley New Japan Projectのコアメンバーも引き続き、櫛田さん、星さん、ダッシャーさんと共に関わることになりましたので、これからも引き続き、シリコンバレーにも頻繁に来ることになると思います。
ということで、この半年間で僕自身にとっては、今後スタンフォードシリコンバレーと連携していく基盤が作れたということなので、今回、farewellということではありますが、お別れという訳ではなく、今後の活動を進めていくにあたって、今日いらしていただいた皆様と一緒に色々な活動をやらせていただくスタートの場にしたい、と思っております。
シリコンバレーに半年いて感じたのは、ボランタリーに相互に協力するカルチャーの重要性です。今回聖光学院の生徒たちと関わる機会を外村さんや、本日いらして下さっている橋本さんからいただきました。シリコンバレーは、片側で競争の激しいビジネスの環境が重要な要素ですが、もう片側ではプロフェッショナルな人たちの相互のボランタリーな活動が、この地域の発展を支えている、ということを強く感じます。
僕自身がこれから日本に移った後に、シリコンバレーと日本の間で、こういったボランタリーなネットワークを作っていけるかどうか、とても大切と思っています。特にシリコンバレー在住の方々に、一方的なボランタリーな協力をお願いするのではなくて、相互にとって「互恵的な関係」になるための仕組み作りが大切、と思っています。日本の人は得てしてこの「互恵性」を忘れてしまい、相手の協力しようとする気持ちの根幹を考えずにお願いする人が多いので。ちなみに、このようなボランタリーなネットワークと、大学というプラットフォームは、うまい仕掛けを作ると、とても相性が良い組み合わせだと思っています。


最後に
結びにあたって、半年間のシリコンバレーの滞在で、自分のとって特に感謝したいネットワークが3つあります。それは出身高校である「SFC中高」、出身大学である「慶應SFC」、そして直前に5年間住んだ「サンディエゴ」の3つです。この3つの人的ネットワーク、そしてそのネットワークにいらっしゃる皆さんのサポートが、自分のシリコンバレーでの生活をより豊かで実り多いものにしてくれました。
最後に、本日お忙しい中、ご参加下さった皆様のご繁栄とご健勝を祈念して、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

 

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2016年「新年の抱負」- アカデミアとしての基盤作りのために

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あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。さて、毎年年初に、その年の目標を決めて宣言しています。以下が、過去14年の目標です。毎年よくこれだけ続いているな、と思います。

 

2015年 「腹回りのダイエット」

2014年 「博士のマーケットに出て、ポジションを得る」

2013年 「アメリカのアカデミアのスピード感の中で猛烈に研究する」

2012年 「アメリカのアカデミアにおいて実績を出す」

2011年 「ワークライフバランスを身につける」

2010年 「自分にとってのディシプリンプリンシパルを身につける」

2009年 「海外進出」

2008年 「博士取得に専念」

2007年 「組織としてのマネジメントを学ぶ」

2006年 「マネジメントにおけるリーダーシップを身につける」

2005年 「多数の学会発表、論文の執筆を行う」

2004年 「ネットワーキング理論に強くなる」

2003年 「財務に強くなる」

2002年 「意思決定における公平性を身につける」

 

達成できた年もできなかった年もあるし、でも割とその年に達成できなくても数年以内には大体できているような気がします。でも昨年の目標「腹回りのダイエット」はちょっと悲劇的に達成できなかった気がします。これでも、フィットビット買って、歩く量を気にしたり、腹筋用の器具を買ったり(買っただけで満足したという噂もある)、体重計頻繁にのって体重を気にしたり、全く努力をしなかった訳ではないんです。まぁ、前向きに解釈するとすれば、こうやって気にしていたから悪化だけは食い止められたという気もしています。ちょっとこの目標は引き続き、気に留めながらがんばっていこうと思います。

 

それで今年の目標については、結構悩みました。今年は色々と生活環境が変わることが見込まれるので、新しい環境に慣れていくことも目標だし。昨年色々なプロジェクトの中で、どんな人とチームを組むか、特に自分の仕事の方向性に会うメンバーとチームを組むこと、多様なバックグラウンドを持つ人の協働の場をつくることの難しさを身を以て体験したこともあるので、人を見る目をもっと養うということも課題だし。日米での仕事が増えていくのでそれをどうやって両立して、かつ相乗効果を出すかも大きな課題です。また、せっかく博士をとり終わって、研究以外のことにも目を向けられるフェーズになったので、アカデミアの知見を実践に活かしていく、というのも目標だし。でも自分のキャラクターを考えたら、いずれにしろ実践の比重は増えていく一方なので、いかにアカデミアとしての実績を増やしていくことの方が大事のようにも思うし。

 

という訳で、ここ数年ずっとやろうと思ってやれていなかった目標として、本を出版するというのがありました。特に、アントレプレナーシップイノベーションの研究のとっても先端的な分野をかなり色々学んでいるので、そういったことをまとめた本を書いてみたいなと思っています。この目標、今年1年で達成できるか分かりませんが、少なくとも今年1年で基盤は作っておきたいと思います。

 

2016年の目標: 「本を出版する」