Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

Farewell in Silicon Valley - March, 2016 ご挨拶

3月25日に、Silicon Valleyの皆様にfarewellを開催していただき、たくさんの皆様にご参加いただきました。その際のご挨拶をまとめました。

 

はじめに
まず初めに幹事のお二人に御礼申し上げます。実は今回、何人かの方からお別れ会をと声をかけていただいたのですが、そういった会がいくつも乱立すると日程的に大変なのと、なるべく一つに統合すると、皆様にとっても良い交流の場になるのではないかと思いました。田内君はSFC中高の後輩で、この半年間もっとも良く飲んだ仲でしたし、一番無理をお願いできる、ということでお願いしました。そしてもう一人の笹井さんはStanford APARCでご一緒させていただいていて、シリコンバレーに広い人脈をお持ちなので、ぜひと思いご協力をお願いさせていただきました。


シリコンバレーとのご縁
僕が今回シリコンバレーに住んだのは半年なのですが、なんでこんなに色々な人とネットワークが広いのか、という質問を良くいただきました。これにはいくつかの経緯があります。
まずサンフランシスコという町は祖父母が60年前に住んでいた場所です。60年前というと、シリコンバレーがまだシリコンバレーが呼ばれる前の時代です。街中には昔祖父母が住んでいた家やらオフィスやら叔母が通っていた学校などがあります。そして叔母がサンフランシスコに永住している関係で、子供の頃から毎年夏はサンフランシスコに呼んでもらっていました。だから例えば子供の頃に何度も連れて行ってもらった遊園地がGreat Americaだったりします。そんな訳で、子供の頃からとっても慣れ親しんでいるのがベイエリアでした。
そして、慶應義塾大学の助手として大学のインキュベーションの仕事をするようになってからは、毎年数回はシリコンバレーを訪れていました。特に本日いらして下さっている大澤さんには2002年にシンガポールでお会いして以来、シリコンバレーで色々な方をご紹介下さって、僕のネットワークを広げて下さいました。
2004年にはJTPA主催のシリコンバレーツアーが開催され、僕は第1回の参加者でした。そのツアーは今日いらして下さっている村山さんの大変なご尽力で立ち上がったものですが、そのツアーでは当時のシリコンバレーのオールスターの皆様が講師をして下さって、シリコンバレーのことを深く学ぶ大変良い機会でした。自分にとってのシリコンバレーに原点はこのツアーだったようにも思います。
2010年に渡米して、サイエンスベースのインキュベーションを学びたいと思い、指導教員のご縁でUC San Diegoに移りました。ここで5年間の博士課程を経て、日本に戻る前に、スタンフォードシリコンバレーにて仕事をしたいと思ったときに、以前UC San Diegoにいらした星先生にご相談して、こちらに移る機会をいただきました。
スタンフォードでは、半年間、星先生、櫛田さんにお世話になりながら、Stanford Silicon Valley New Japan Projectのコアメンバーとして活動してきました。
という経緯でしたので、実際にはシリコンバレーに半年前に来たというよりは、半年前にシリコンバレーに戻ってきたという感覚でした。


スタンフォードでの役割
今回のスタンフォードでの雇用は、初めから半年という前提でした。一般論として、半年だけの雇用というのは例外といえば例外のように思います。相互にとってメリットが少ないので。
どうしてこのような形で受け入れていただけたかというと、星先生のご意向として、僕が今後日本に戻っても、Stanford APARCと共同研究できる人がいた方がいいので、この半年間で、こちらの環境を理解し、連携する体制を準備しておいて欲しい、とのことでした。
この半年間はそのための土台作りということで、とにかく色々な方とお会いして、今後の連携のご相談をさせていただいてきました。
実際に、この半年間で、シリコンバレーとの共同研究・共同プロジェクトについて色々な可能性が膨らみました。APARCとのサイエンスポリシー・イノベーションポリシーの評価のプロジェクト、教育政策に関するプロジェクト、Entrepreneurial Universityの評価プロジェクト、デザイン思考とポリシーなどなど。池野さんとの出会いで、Bio Designとビジネス化についてどんな貢献ができそうかご相談させていただいています。桝本さん・赤間さんが進めていらっしゃるSilicon Valley Japan Universityにも自分が貢献できることがないかと思っています。また、APARCの日本のOB/OGのとりまとめもしていきたいですし、その他こちらで出会った多くの方々とご一緒したいことがたくさんあります。


今後、日本にて
4月からは日本のポリシースクールにて、「科学技術とアントレプレナーシップ」という政策の授業を教えます。その後、ビジネススクールに移って、「テクノロジーマネジメント」の授業を担当します。それと同時に、UC San Diegoの客員助教授を兼務して、8月にはUC San Diegoでも授業を持ちます。ですので、シリコンバレーの皆様にはぜひ8月にサンディエゴに遊びにいらしていただければ、と思っています。色々な場所ご案内しますし、シリコンバレーとサンディエゴのエコシステムがつながる良いチャンスとも思っています。
そして最後に、Stanford Silicon Valley New Japan Projectのコアメンバーも引き続き、櫛田さん、星さん、ダッシャーさんと共に関わることになりましたので、これからも引き続き、シリコンバレーにも頻繁に来ることになると思います。
ということで、この半年間で僕自身にとっては、今後スタンフォードシリコンバレーと連携していく基盤が作れたということなので、今回、farewellということではありますが、お別れという訳ではなく、今後の活動を進めていくにあたって、今日いらしていただいた皆様と一緒に色々な活動をやらせていただくスタートの場にしたい、と思っております。
シリコンバレーに半年いて感じたのは、ボランタリーに相互に協力するカルチャーの重要性です。今回聖光学院の生徒たちと関わる機会を外村さんや、本日いらして下さっている橋本さんからいただきました。シリコンバレーは、片側で競争の激しいビジネスの環境が重要な要素ですが、もう片側ではプロフェッショナルな人たちの相互のボランタリーな活動が、この地域の発展を支えている、ということを強く感じます。
僕自身がこれから日本に移った後に、シリコンバレーと日本の間で、こういったボランタリーなネットワークを作っていけるかどうか、とても大切と思っています。特にシリコンバレー在住の方々に、一方的なボランタリーな協力をお願いするのではなくて、相互にとって「互恵的な関係」になるための仕組み作りが大切、と思っています。日本の人は得てしてこの「互恵性」を忘れてしまい、相手の協力しようとする気持ちの根幹を考えずにお願いする人が多いので。ちなみに、このようなボランタリーなネットワークと、大学というプラットフォームは、うまい仕掛けを作ると、とても相性が良い組み合わせだと思っています。


最後に
結びにあたって、半年間のシリコンバレーの滞在で、自分のとって特に感謝したいネットワークが3つあります。それは出身高校である「SFC中高」、出身大学である「慶應SFC」、そして直前に5年間住んだ「サンディエゴ」の3つです。この3つの人的ネットワーク、そしてそのネットワークにいらっしゃる皆さんのサポートが、自分のシリコンバレーでの生活をより豊かで実り多いものにしてくれました。
最後に、本日お忙しい中、ご参加下さった皆様のご繁栄とご健勝を祈念して、ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

 

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