Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

新年の抱負: 2007年の目標

新年の抱負  牧 兼充 - 書き初めくん - はてなセリフ


ここ数年、毎年新年に1年間の目標を決めることにしている。年初に1年間の目標を決めておくことで、1年間の活動を通じて、例えば意思決定に迷ったときに、この目標に照らし合わせながらその判断をすることが可能となり、結果的に1年立つとある程度その目標が達成できるからである。ちなみに過去の目標としては、2002年は「意思決定における公平性を身につける」、2003年は「財務に強くなる」、2004年は「ネットワーキング理論に強くなる」、2005年は「多数の学会発表、論文の執筆を行う」、2006年は「マネジメントにおけるリーダーシップを身につける」であった。

さて、今年2007年の目標は、「組織としてのマネジメントを学ぶ」としようと思う。今までの5年間、SIVの活動は組織としてではなく、属人的に進めてきた。対外的には、大学として推進しているように見えても(もちろんSIVの活動の一部は大学という組織として推進している部分もある)、基本的にはあくまで研究活動であり、研究者個人の判断として、いわば属人的に行ってきたのが実情である。

私があくまで属人的に拘ってきた背景は以下の通りである。

  • SIVを立ち上げた1年目は、大学におけるインキュベーションの体制を組織として作ろうと考えていたが、当時は大学におけるインキュベーションは未知の領域であり、全く組織体制整備は進まなかったため。
  • インキュベーションは、ネットワーキングが極めて重要であり、ネットワーキングは組織ではなく属人的に構築されるものであるため。
  • 米国等のインキュベーション先進大学は、大学としてはインキュベーションを行わず、外部の多様な組織がその役割を担ってきた。SIVも外部とのネットワークを増やしていくことが重要であり、大学内のオフィシャルなインキュベーション組織は必要ないと考えているため。
  • 大学内には価値観の大きく異なる複数の学部があり、学部内でも多様な教員の意見が存在する。この多様性を一つにまとめることは困難であると考えているため。特に多様な意見の集まる会議体においての意思決定はインキュベーションのスピード感とは合わないことが多い。
  • 大学時代が現在抱えている業務に比べて、インキュベーション分野は特殊であり、インキュベーション業務を内在化しても、現在の組織体制ではその業務を担うことは困難であるため。
  • 大学自体がインキュベーション業務を担うためのインセンティブが大学全体として成熟していないため。
  • SIVの活動を通じて、属人的なマネジメントの方が着実に実績をあげられるということを経験的に感じているため。
  • スタンフォード大学、MITなどは、アントレプレナーシップを教育・研究活動として推進しており、大学組織からは一歩距離をおいている。SIVも同様の立ち位置に立つことが好ましいと考えるため。
  • 組織全体を巻き込むよりも少数精鋭で推進した方が成果が出しやすいと考えているため。

しかしながら、SIVの活動が大きくなればなるほど、現在の活動全体を私一人がマネージすることが不可能になりつつある。それと同時にSIV内外から、今後の継続性を考えて、組織体制のあり方を再考すべきとのご意見を多数いただくようになった。

私が組織としてのマネジメントに踏み出そうとこの年末年始に思うに至った背景は、以下の2冊の本を読んだからである。

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌

小泉官邸秘録

小泉官邸秘録

この2冊は、小泉改革のプロセスをそれぞれ竹中大臣、飯島秘書官の立場からまとめたものである。この2冊を読んでみて、

  • 少数精鋭の推進も有効ではあるが、本当に大きな改革を行う際には組織を動かしていかなくてはならない。
  • 組織としての改革を行わないと、組織の構成員である人が変わらず、結果的に改革の継続性が確保できない。
  • 飯島秘書官による「官僚組織は使いこなすもの」という考え方に立つことの重要性。
  • 竹中大臣の「戦略は細部に宿る」という巨大な組織を動かすための方法論。

などのことを学んだからである。

SIV代表の國領先生が、慶應義塾全体のインキュベーションセンターの所長に就任した。このインキュベーションセンターの体制作りのプロセスをお手伝いさせていただくことを通じて、上記のことを実践してみようと思う。


映画「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」は、官僚組織とネットワーク組織の戦いを描いたものである。私自身はどちらかというとネットワーク組織を信じ、どちらかというと官僚組織には否定的である。しかしながら最後の青島の「組織もリーダーが優秀であれば悪くない」という台詞があるが、今年1年を通じてこの言葉の意味で肌感覚で感じることができれば、と思う。

踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! [DVD]

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