Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

大学発ベンチャー育成のプレインキュベーション段階におけるAlumni Networkによる支援モデルに関する研究


本日、國領研大学院プロジェクトのミーティングにて研究発表を行いました。発表概要は以下の通り。


1. 背景
インキュベーションは段階に応じて、プレインキュベーション、インキュベーション、ポストインキュベーションの3段階に分類されるが、この中でもプレインキュベーションは、支援ネットワークの構築が最も困難である。
この課題を解決するための先行研究として、地縁ネットワークの有効性が明らかになりつつあるが、地域は同質性の強い結束型社会関係資本であり、多様性の結合が重要なプレインキュベーションの支援ネットワークとして適切であるか、との議論の余地がある。
本研究では、大学を基盤としたインキュベーションにおける、最も有効な支援ネットワークであると推定されるAlumni Networkに焦点をあてて、その有効性を検証する。

2. フレームワーク
社会関係資本 (結束型社会関係資本と橋渡し型社会関係資本)、信頼と安心、フォーラム型とダイアローグ型、オープン性とクローズ性、強い紐帯と弱い紐帯

3. RQ
RQ1: プレインキュベーションにおいて必要なネットワークの特性は、他の段階と比べてどのように異なるのか。(仮説1: 1) 社会的不確実性の高さ 2)インセンティブの設計の困難さ 3)取引コストの高さ 4)機会コストの高さ) (仮説2: 取引コストと機会コストの削減を共に満たすネットワークが必要)
RQ2: alumni networkは、地縁ネットワークとどのように異なるのか。
(仮説: 地縁ネットワークは、取引コストを削減し、機会コストを増加させるネットワーク。Alumni networkは、取引コストと機会コストを共に削減させるネットワーク。)
RQ3: alumni networkは、どのようなメカニズムで成立しているのか。(内的妥当性の検証)
(仮説1: 「安心」志向ではなく「信頼」志向のネットワークを形成している。) (仮説2: alumniは支援に対する直接的な対価を求めず、楽しさ、母校の発展をインセンティブとしている。)
RQ4: 慶應義塾は、他のalumni networkに比べて、「信頼の規範」がどのように異なるのか。(外的妥当性) (仮説: 慶應義塾のalumni networkは他と比べて信頼の規範の成熟度が高い。)

4. 手法
RQ1: 先行理論の整理、支援ベンチャーへのケーススタディ、起業家への構造化インタビュー
RQ2: ケーススタディ法による比較、アンケート調査
RQ3: 複数ネットワークのコーディネータへの構造化インタビュー、メンター三田会のケーススタディ
RQ4: 複数のalumni networkへのアンケート調査 (メンター三田会、他)