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Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

アルゴ船の船旅に出よう -The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy-

書評


最近私が最もコンセプトに共感し、興味深く読んでいる本に、Annalee Saxenianの"The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy"があります。まだ日本語版は出ていませんが、そのうち出るだろうと思います。日本では大ヒットするかは分からないけれども。ちなみに、Saxenianの著作は前作の「現代の二都物語」も有名です。


The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy

The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy


この本のエッセンスをまとめると以下の通りです。昨今アジアでは、台湾、インドなどの地域が台頭しつつあります。なぜこれらの地域が発展したか。その秘密は、人材の還流にあります。1980年代あたりから、これらの地域では、積極的に若手人材を米国に送りこみました。彼らは米国で工学の博士を取得し、その後数年間シリコンバレーのベンチャーで働き、そして母国へ戻ってくるという変遷をたどっています。帰国後は、母国において、ベンチャー経営、エンジェル、政策立案等、多面的に活躍し、その地域のクラスターの発展に貢献しているそうです。特に興味深いのが、これらの地域は独立して存在している訳ではなく、シリコンバレーとの連携により成り立っているとのこと。Saxenianは、これらの人材を"The New Argonauts"と呼び、グローバル競争における地域優位の源泉であるとしています。

ところで、この"Argonauts"という言葉、私は馴染みがなく、どのような思いが背後にあるのかを調べてみました。Wikipediaによると、"Argonauts"は日本語で言うと「アルゴナウタイ」。ギリシャ神話に登場する船に乗り組んだ人たちらしいです。

アルゴナウタイ(古典ギリシア語:Ἀργοναύται Argonautai)は、ギリシア神話の長編叙事詩に登場する英雄たちの総称。イアーソーンに率いられて巨大なアルゴー船で数々の航海をする。「アルゴーの船員」を意味するアルゴナウテース(古典ギリシア語:Ἀργοναύτης Argonautes)の複数形がアルゴナウタイである。英語読みでは「アルゴノーツ」。

概要

時代設定はトロイア戦争の前。テッサリアのイオールコスの王子イアーソーンは、父から王位を奪ったペリアースに王位の返還を求めるが、コルキス(黒海東端の王国。現在のグルジア西部)にあるという黄金の羊の毛皮(金羊毛)を要求される。イアーソーンは女神アテーナーの助言を受けて、プリクソスの子で船大工のアルゴスに50の櫂を持つ巨船を建造させ、船名をアルゴスの名から「アルゴー」(「快速」の意)とした。アテーナーは、ドードーナの樫の木からものを言う材木をアルゴーの船首につけた。イアーソーンが船員を募ると、ギリシア中から勇者たちが集まった。こうしてアルゴー船に乗り組んだ勇者をアルゴナウテース、総称としてアルゴナウタイという。

イオールコスを出航した一行は、レームノス島をはじめとした数々の冒険を経てコルキスに達した[1]。コルキスではイアーソーンと恋に落ちたコルキスの王女メーデイアが加わり、目的の金羊毛の獲得に成功する。アルゴナウタイは、その後も冒険を重ね、部分的に脱落者も出しながらもイオールコスに帰還した。4ヶ月間の航海だったという。


これだけ読んでも、なるほど「アルゴ船」は大冒険だったんだな、とは思いつつも、Saexenianがなぜわざわざこの名前をつけたかがいまいちピンときません。次に英語のWikipediaで調べて、やっと分かりました。英語では、"The Argonauts"というのは、アルゴ船の船員という意味から派生して以下のような意味があるそうです。

Argonaut, a person taking part in the California Gold Rush, arriving in California by sea


ゴールドラッシュ時に、海からカリフォルニアにきた人を"The Argonaut"と呼んでいたのですね。そういう意味ではまさに、"The New Argonauts"という名前、なるほどな、と思いました。



さて、この本、今後深く研究してみたいと思います。自分自身も、"The New Argonauts"になるべくがんばらなくては。もし、自分自身が"The New Argonauts"になれれば、SIVで本当に実現したいと思っていることが、本当に実現できるようになる気がします。