Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

飯盛義徳、「地域情報化プロジェクトにおける協働メカニズムの探究」


自分の博士論文へ向けて、最も参考になるであろう飯盛さんの博士論文をじっくり読み込みました。以下にサマリーをまとめてみます。やっぱりこの研究で一番面白いのは、「鳳雛塾、市民塾の参加メンバーへのインタビュー調査を行った結果、必ずしもすべてのメンバーが共通の目的を持っているわけではなく、それぞれの興味に応じて、活動を行っていることが明らかとなった。一般的に、メンバー間の共通目的が必要であると信じられていたが、必ずしもそうではないことが明らかになった。」という部分だな、と思います。

タイトル

飯盛義徳、「地域情報化プロジェクトにおける協働メカニズムの探究」、慶應義塾大学大学院経営管理研究科博士論文

サマリー

この研究は、地域情報化プロジェクトを対象とし、地域における様々な人々の協働のメカニズムを探究する仮説構築型の事例研究である。研究では、事例から帰納的に仮説を提示するだけではなく、理論研究をもとに事例を分析する際の視点となる仮説を導出し、事例分析を経て、さらに仮説を構築するアプローチをとっている。この研究では、地域情報化の中でも、人材育成に特化し、5年以上継続しているプロジェクトである、佐賀県のNPO法鳳雛塾と、富山県の富山インターネット市民塾を分析対象としている。
第1章では、研究に至った問題意識や背景、リサーチクエスチョンを整理している。第2章では、研究方法とアプローチを述べている。第3章では、鳳雛塾、市民塾の活動内容、運営組織、成果などの事例を紹介している。第4章では、理論研究を行っている。第5章では、理論研究から求められる、地域情報化プロジェクトに関する仮説を導出している。第6章では、導出された仮説に対して、鳳雛塾、市民塾、それぞれの活用の参与観察及び半構造化インタビュー等を行った結果をまとめている。第7章では、分析をまとめ、仮説を再度構築している。
この研究は、学際領域に位置づけられており、先行研究としても多数のフィールドを調査している。「情報社会、地域情報化に関する研究」としては、情報文明論、プラットフォーム論をまとめている。「ネットワークに関する研究」としては、ネットワーク組織論、情報技術の特殊性、ネットワークの構造、産業集積論、場の概念についてまとめている。「協調行動に関する研究」としては、取引コストの削減、資源依存のパースペクティブ、資源動員論、信頼、ソーシャルキャピタル、社会的交換理論等についてまとめている。
以上の先行研究の調査の結果、以下の仮説を導出している。
仮説1: 新しい事業が次々に生まれ、継続的な活動を行っている地域情報化プロジェクトにおいては、強い紐帯、弱い紐帯が共存した構造になっている。
仮説1-1: プロジェクト運営の意思決定は、強い紐帯で結ばれたメンバー間でのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションによって行われる。
仮説1-2: 新しい事業のきっかけとなる情報は、弱い紐帯で結ばれたメンバーからもたらされる。
仮説2: 地域情報化プロジェクトにおける協働を実現するためには、事業推進に対するメンバー間の共通目的が必要である。
仮説3: 地域情報化プロジェクトにおける協働を実現するためには、メンバーの役割形成が必要である。
この仮説を検証するために、参与観察及び半構造化インタビューを行った。鳳雛塾、市民塾共に、ほぼ毎日連絡を取り合うメンバー(コアメンバー)とそうでないメンバーに区分けされる。それぞれのコミュニケーション頻度とコミュニケーション手段を分析した結果、プロジェクト運営の意思決定は、強い紐帯で結ばれたメンバー間でのフェイス・トゥ・フェイスによるコミュニケーションにより行われ、新しい事業の立ち上げについては、弱い紐帯のメンバーによる情報提供により行われることが明らかとなった。以上の分析により、仮説1-1、1-2については支持された。
鳳雛塾、市民塾の参加メンバーへのインタビュー調査を行った結果、必ずしもすべてのメンバーが共通の目的を持っているわけではなく、それぞれの興味に応じて、活動を行っていることが明らかとなった。従って、仮説2は棄却された。社会的活動においては、一般的に、メンバー間の共通目的が必要であると信じられていたが、必ずしもそうではないことが明らかになった。
鳳雛塾、市民塾にはそれぞれコアメンバーが存在し、一般メンバーはコアメンバーに新しい事業を提案し、コアメンバーからリーダーに任命されて活動を開始する、というプロセスがあることが割った。従って、仮説3は支持され、また具体的なそのメンバーの構造として、コア、サポーター、一般の3段階に分けられることが明らかとなった。

コメント

地域情報化におけるプロジェクトをプラットフォーム論、ネットワーク論の観点から分析しているこの研究は、私自身の博士論文と極めて構成が似ており、大きく参考になった。この論文を参考にしながら、先行研究の整理、目次案の作成、仮説の構築、分析手法の検討を進めていきたいと考えている。