Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

運を自ら引き寄せるattitudeとは -"What I Wish I Knew When I Was 20"-


私がアントレプレナー育成プログラムに携わるようになった中で最もinspireを受けれ人を一人選べと言われたら間違いなくStanford Technology Venture Program (SVTP)のexecutive directorであるTina Seeligを選ぶでしょう。そんな彼女が最近の思いをまとめた"What I Wish I Knew When I Was 20"という著作を出しました。先々週発売されましたこの本、早速読みました。


What I Wish I Knew When I Was 20: A Crash Course on Making Your Place in the World

What I Wish I Knew When I Was 20: A Crash Course on Making Your Place in the World


私がTinaから学んだものとしては、財布を作るワークショップ、トランプタワー、Innovation Challenge (1000円札を配って特定期間に価値をあげるコンテスト)、この本のタイトルにもなっている"What I Wish I Knew When I Was 20"という観点から学生に話す手法、Vinod KhoslaやGuy Kawasakiのビデオクリップを見せることなど多岐に渡ります。私の授業のスタイルは彼女から学んだことが散りばめられているといっても過言ではないでしょう。一つ一つのワークショップは、アカデミックではないけれども、これらのワークショップから学生は様々な視点をTakeawayします。

Tinaは、Entreprenurshipとは何か、Design思考とは何かをこの本で豊富な事例に基づいて、読者に語りかけます。アントレプレナーシップや、d.school的なDesign思考を学びたいと思う人にはお薦めの一冊です。使っている英語も難しくないので、日本人でも簡単に読むことができると思います。英語を勉強したいと思ってる人が読むにもちょうど良いレベルの英語だと思います。


この本で一番伝えたいメッセージは、人生において運を自ら引き寄せるattitudeとは何か、ということであろうと思います。この本の最後をTinaは以下の文章で締めくくります。

As the stories in this book demonstrate, the most interesting things happen when you get off the predictable path, when you challenge assumptions, and when you give yourself permission to see the world as opportunity rich and full of possibility.

ぜひ多くの皆さんがこの本を読んでinspireされるといいな、と思います。ところでこの本、日本語訳が出ても良いように思いますが、まだ出版元は決まっていないのでしょうか。個人的には、日本語訳を出版するんだったら英治出版が一番しっくり来る本なのではないかと思い、先日英治出版に勤める後輩にこの本を紹介しました。英治出版は、最近私が最も好きな出版社です。本当に自分が読みたいと思うセンスの良い本はほとんどここが出しているといっても過言ではないと思います。この本については、もうどこかの出版社が翻訳権を抑えているかも知れないけれども。


関連して、梅田望夫さんの「ウェブ時代 5つの定理」は、ビジョナリーたちのshort phraseからシリコンバレーの価値観を伝えています。一方でこの本は、Tinaが感じた様々なストーリーをつむぐことで、シリコンバレーの価値観、ライフスタイルを伝えています。どちらも心で読む本です。様々なメッセージから新しい視座を得ることができます。この2冊を合わせて読むと多くのことを感じることができるのではないか、と思います。どちらも根底に流れるメッセージは同じだと思います。


ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!

ウェブ時代 5つの定理―この言葉が未来を切り開く!


最後に蛇足ですが、この本に出てくるいくつかのストーリーは私も間近で経験しています。Innovation Challengeの国際版は慶應からもチームを出しましたし。その共有体験の中で、一番インパクトがあったのは、北京のカンファレンスで一緒にいったときに、Tinaが万里の長城(The Great Wall)で日の出を見たいということで、その実現のために奔走したことです。実は私もそのツアーに参加しました。この本には出てきませんでしたが、Tinaはあれだけ苦労してそのツアーを実現させたのに、本人は体調崩して当日参加できなかったことです。あのときは、結局オーストラリア人とドイツ人の大学のfacultyと一緒にそのツアーに参加したんですが、早朝の誰もいない万里の長城から見る日の出というの、忘れられない良い思い出でした。Thanks to Tina !