Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

女性研究者の支援から考えること


少し前の話になりますが、慶應義塾において、女性研究者を全塾規模で支援するプロジェクトが立ち上がりました。
(http://www.wlb.keio.ac.jp/project/index.html)

このようなプロジェクトは、日本のイノベーションの未来にとって重要だと思っています。「男が夢を語り、女はそれを支える」みたいな石器時代のような考え方を未だに持っている人もいますが、男性も女性も対等に、かつ適切な役割分担をしながら、どちらも活躍できるような社会になっていくべきだし、その議論を活発に行っていくことは日本社会にとって重要です。このようなプロジェクトが今立ち上がるというのは、グローバルに見れば、「今更?」という感覚だと思います。でもそれが日本社会の現状なんだと思います。

世の中でイノベーションを産み出す、もしくはそれを具現化できるアントレプレナーとしてのポテンシャルを持っている人の半分は女性な訳で、そういった女性の方々の能力を社会のために活かすことができなければ、社会にとって大きな損失になります。そのための第一歩として、イノベーションを生み出す研究者の女性比率を高めていくことは絶対に必要なことです。

間違いなく、国別のイノベーション創出度と女性の活躍度の統計をとれば、相関関係があるはずですし、今後その制度設計が、イノベーション分野にとっても日本の国際競争力の源泉になっていくだろうと思います。


この論点を色々と考えて見ると、この視点を大学のインキュベーション・システムに加えるだけで、新たなプログラムを沢山作ることができそうです。

「概論を履修する女子学生をencourageするために、女子学生が発言した場合は発言点を倍にするインセンティブを作り、女子学生を増やす」とか逆差別のような冗談はさておいて、例えばSFC-IVを作るときに、シャワールームは、絶対に一つ女性専用のものを作らなくてはダメだ、というのも今思うと、極めて重要な意思決定であったように思います。

SFCに託児所ができれば、女性起業家にとっても助かります。もしくは、研究者の方が時間の融通が聞くので旦那が大学で子供を託児所に子供を預けることができるようになれば、奥さんは企業でバリバリ仕事ができます。

例えばKBCのコンテストも、女性だったら加点とかだと逆差別でつまらないですが、男女混合のチームだったら、「チーム構成のdiversity」という視点で加点するとか。ちなみにこれは、「日本人と留学生」の混合チームでも同じように加点になる制度な気がします。違う世代の学生、例えば、「SFCの学部生とKBSの学生」がチームでも加点になるかも知れない。「学部横断のチーム」だったら加点もありかも知れない。diversityの確保のために、女性のempowermentは重要です。


何気に、慶應のビジネスプランコンテストに携わっていると、男性よりも女性の方が優秀なプランを出してくることに気づきます。女性履修者の少なさを考えると、潜在的には女性の方が優秀である可能性もあります。

こう考えると、もしかしたら、「イノベーションを生み出す素質を持った人材は、男性も女性も同じ確率いるはずで、女性の能力を活かせていないことは、そのまま国際競争力の低下につながる」と思っていましたが、実は女性の方がイノベーションを生み出す素質を持った人材の確率が高いという仮説も成り立つのかも知れません。

そうすると、女性が働き、男性が主夫+育児をする社会を設計した方がもしかしたら国の国際競争力があがるのかも。でもそこまで行くと、国際競争力の議論ではなく、個々人がどのように幸せな人生を送っていくか、という議論になってきますね。もちろん、価値観は多様であるべきであると思いますが。


大学のグローバルな競争力を評価する世界ランキングがありますが、その評価指標の一つとして、学生に占める女子学生の割合と、Facultyに占める女性の割合がほぼ同じであることが採点の対象になる場合があるそうです。そうすると、日本の大学は軒並み低い評価になってしまいます。

この問題は根深く、これからの日本社会がイノベーションを促進するために絶対に解決しなくてはならないテーマです。