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Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

技術の知見を持たない人が、(技術)イノベーション産業に貢献できるのか

理工系人材が(技術)イノベーション産業をリードするべき
今まで漠然としたまま自分の考え方を曖昧なままにしていましたが、やはりはっきり自分の意見を示した方が良いと思うので、明確に言うことにしました。

私自身、技術系くずれなんで、こんなことを言うのは微妙なんですが、根本的には、実は(技術)イノベーション産業というのは、理工系の人が中核に沢山いないと良い成果が出せないんじゃないか、と本音では思っていたりします。文系で良い仕事をできる人もいますが、どちらかというと例外なような気がします。

文系の人が技術の本質を理解することってなかなか難しいけど、理工系の人がビジネスを学ぶことは、早いタイミングでそういうチャンスがあれば両方身につけることができて、活躍する人材になるように思います。どう考えても、(技術)イノベーションというのは、技術の知見なしには携わっちゃいけないんじゃないかと思うんです。

そういう意味でいうと、この(技術)イノベーション産業のマネージメントをする人に、理工系出身の人がもっと参加することが必要不可欠です。できれば、修士や博士を取得しているような人が。アメリカでこの分野の人と出会うと、実に理系の博士を持っている人が多いです。日本もそういう人材が増えていかないと。。。

ところで、今回あくまで、「(技術)イノベーション」と表現しているのは、イノベーションは技術だけではなく、「ソーシャル・イノベーション」など色々な分野がありえて、私が今回主張したいのは狭義の意味での「技術」イノベーションを対象としているからです。

色々な意見があるし、ソーシャル・イノベーションが重要であることは異論は全くないのですが、私はやはり実体経済として日本が国際競争力を持つためには、(技術)イノベーションは必要不可欠だと思っています。

ちなみに、もちろん、文系の人でも、理工系に対する敬意を示し、かつ技術をきちんと学ぼうとするattitudeのある人は、(技術)イノベーション産業でも活躍する場はある程度はあると思います。でも、文系で「私は文系ですから技術に興味はありません。他の専門で貢献しますから。」というような人は、やっぱりこの分野でご活躍いただくのは厳しいんだろうと思います。そういう人が(技術)イノベーション産業の中核をしめているから太刀が悪い。。。。


人材育成
理工系で、(技術)イノベーション産業をリードする人材をもっと育てる仕組みを作っていかないといけないんですが、なぜ日本ではそれができないんでしょう。アメリカの理工系の学生と話してると、アントレプレナーシップを含めてビジネス系の授業をとってる人が沢山います。ビジネスプランコンテストの運営などの社会的活動も、工学部の学生が積極的に絡んでいます。日本の理工系の学生に聞くとそんな時間がないという。教員に聞いても学生は基礎的勉強をするので精一杯という。理工系の学生が要領悪いとも思えないし、教員の教える効率が悪いからとも思えないし。

なぜ米国の理工系の学生は、(技術)イノベーション分野に関わる時間があって、日本の学生は時間がないか、ここは一度調べてみたいテーマです。恐らく制度的課題があるのだろうと思います。

この問題意識は、今すぐ解決することはできません。でも私がこの国の(技術)イノベーション産業に貢献していくにあたって、ぜひとも根本的に解決したいテーマの一つであります。


お勧めの本

ところでこんな問題意識を持っているときに、読んだ本があります。


「理工系離れ」が経済力を奪う (日経プレミアシリーズ)

「理工系離れ」が経済力を奪う (日経プレミアシリーズ)


この本は、今、理工系の学部で何が起きているかが良く分かります。著者は理工系出身で金融工学を専門にしているので、その視点からのプロモーションの要素も若干感じましたが、大枠私が感じていることと同じです。

この本のエッセンスで「なるほど」と思ったことをまとめてみます。

  • 大学の文系出身者の方が理工系出身者よりも、生涯年収の平均が5000万円高い。
  • 理工系に進学した人が途中で、文系学部に転部する人が多い。
  • 経済学部などが金融工学学科を作っており、その人材獲得のために、理系人材を引っ張っている。


この流れは危機的であろうと思います。ここ数年のアメリカが世界に輸出してきた最大の商品は「金融商品」であったことに象徴されるように、先進国は人材がどうしても「金融工学」に人材が流れることには必然性はあるように思います。

でも、(技術)イノベーションの源泉となる科学技術開発を発展途上国に頼るのではなく、科学技術を担う人材は先進国にも絶対必要です。金融工学の重要性は良く分かりますが、金融工学はあくまで「主産業」ではなく、「主産業をサポートするための有効なツール」であろうと思います。あくまで実体経済を先導していく科学技術の発展が求められています。


何としても、理工系人材が金融工学に怒涛のように流れる事態は避けたい。理工系人材が、(技術)イノベーション産業に携わり、きちんとそのプロフェッションに対する報酬を得られるよう国でありたい。

このような社会制度の設計はどのようにしていけばいいのでしょう。今まさに、日本は大きなチャレンジに直面していると思います。