Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

SFCの学生は勉強していない!?


SFCの学生は勉強していない!?
最近家に閉じこもって、色々な本を読みまくる毎日を過ごしていますが、色々なことを勉強すればするほど、自分は学部から修士の間に、如何に文献を読んでいなかったかということを痛感します。

世間では「SFCの学生は優秀」、「SFCの学生は入社してもすぐ辞める」、「SFCの学生は生意気で扱いづらい」などの風評は聞きますが、「SFCの学生は勉強不足」という風評は比較的少ないように思います。どちらかというと、加藤寛さんのプロモーションのお陰で、「24時間キャンパス」のイメージが強く、学生はキャンパスに泊まってでも勉強している、というイメージが存在しているように思います。

私は学部時代に、SFCキャンパスガイドという、高校生を中心に外部からのSFCへの見学者に対して、SFCを案内する学生グループに所属していました。ガイドをしている際に、メディアセンターでは「ここには本が沢山ありますが、三田に比べると、借りる人が少なく、綺麗な本が多いようです。」と説明すると参加者の笑いをとれます。そしてその後に、「もう本で勉強する時代ではないんです。SFCは、本だけではなく、インターネット、データベース等の様々なメディアを駆使して学びます。だから本の利用率が他キャンパスと比べて少ないのです。それがこの建物を図書館と呼ばずにメディアセンターと呼んでいる所以です。」と説明していました。当時から、何となくこの説明には違和感もあったのですが、先輩の皆さんも同じような説明をしていたので、真似をしていました。

ところで、SFCの最寄駅は、湘南台ですが、SFC側のバスロータリーに大きな有隣堂(本屋)がありました。SFCは駅からバスで10分のところにあるので、言わばこの本屋が大学から一番近い本屋ということになります。この本屋は開業してから8年くらいで何とつぶれてしまって、パチンコ屋と飲み屋になってしまったんです。大学から最も近い本屋がつぶれてしまう大学って何なんだ、、、、と疑問に思いました。その問題提起を学生にしてみると、「SFCの学生は本は本屋で買うのではなく、amazonで買うので、最寄の本屋がつぶれるのは当然でしょう。」とのこと。なるほどなぁ、と思いつつ、何となく歯がゆさがなくなりません。


加藤寛さんのゼミ@経済学部
そんなときに読んだのが、SFC初代総合政策学部長の加藤寛さんが経済学部教授時代のゼミの様子を書いた本です。


切磋琢磨―慶應義塾・加藤寛ゼミに学ぶ人材育成

切磋琢磨―慶應義塾・加藤寛ゼミに学ぶ人材育成


この本を読むと、経済学部の加藤寛ゼミがいかに優れたシステムを持っていて、学生が如何に学び、沢山の書物を読み、そして加藤さんご自身が学生を指導していたかが分かります。加藤さんが目指した教育の場の理想の多くはSFCで実現されていることが分かります。

でも、ひとつだけSFCで大きく変えたのは、「書物から学ぶ」のではなく、「プロジェクトベース」の教育手法です。プロジェクトベースの教育スタイルは、学生のモチベーションを高めるし、学際的な分野を学ぶにあたっては確かに一つの方法だとは思います。


まとめ
インターネットが発展している時期というのは、インターネットで情報を得るという、インターネットリテラシーが大事だったし、そこからの情報で学ぶことが沢山あったように思います。でも、インターネットが当たり前になった今や、インターネットで学ぶという手法は競争優位になると思えません。もっと言えば、私が大学時代の1996年から2000年の方が今よりもはるかにネットに流通する情報の質が高かったように思います。ネットの情報の質がどんどん低くなっている気がしてなりません。

そんな時代だからこそ、大学において学問を行うには、ネットに頼るのではなく書物に頼る、という温故知新の精神が、学部教育においても、今強調されなくてはならない、という気がします。そんなときに、SFCの原点である加藤寛さんのゼミの運営スタイルを、SFCで復活することができたら良いなと思いながら、この「切磋琢磨―慶應義塾加藤寛ゼミに学ぶ人材育成」を読みました。

SFCにて今学んでいる人、SFCで今プロジェクトばかりやっている人をはじめ、社会人になって新たな学びの場を求めてる人などなど、多くの皆さんにお勧めの一冊です。どうやって「真の学び」に対するインセンティブを引き出す場を設計すれば良いかが良く分かります。

私はSFCでは、アカデミアそのものよりも、プロジェクトを重視していたところがありますが、そのスタイルにはずっと悩みと居心地の悪さを感じていました。私が研究者として今後成長していくにあたって、学生とのかかわりを持つときのスタイルをずっと模索している訳ですが、その意味でも学ぶことの多い一冊でした。