Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

行動経済学関連で読んだ論文


先学期聴講した行動経済学の授業で読んだ論文で、自分の研究と関係ありそうだと思ったものを抜粋しました。簡単にメモをつけていますが、論文一つひとつを深く読み込めていないので、内容はやや自信がありません。またもう少し時間がとれるときに、しっかりとした書評をまとめたいと思います。


行動経済学の論文で興味をひかれたもの

  • Gneezy, U., and A. Rustichini “Pay Enough or Don't Pay At All.” Quarterly Journal of Economics August 2000, 791-810.

給料の上昇は必ずしも労働者のインセンティブを高めるものではないことを実証した研究。

  • Gneezy, U., and A. Rustichini “A Fine is a Price,” Journal of Legal Studies, vol. XXIX, 1, part 1, 2000, 1-18.

保育園の遅刻者を減らすために、遅刻にあたっての罰金を設けたところ実際には、遅刻者が増えた。罰金を払えば遅刻してもよいという価値観が生まれることを実証。

  • Gneezy, U., E. Haruvy, and H. Yafe “The inefficiency of splitting the bill: A lesson in institution design” The Economic Journal, April 2004, 114, 265-280.

レストランで、おごり、割り勘等の複数の支払い方法を比較し、それによって、注文内容が変わるかどうかを実験したもの。人は支払い方法が事前に分かることによって注文内容が大きく変わる。

  • Charness, G. and U. Gneezy “Incentives to Exercise.” Econometrica, 2009, 77 (3), 909-931.

ジムに定期的に通うために、金銭的なインセンティブは有効かの実験を行った。金銭的インセンティブは短期的なジムへ通う回数の向上にはつながるものの、長期的な向上にはつながらなかった。

  • Meier, S. (2010) “Non-Savers Anonymous: The power of peers as a savings commitment device.”

銀行での貯蓄の向上のために、テキストメッセージを定期的に送ることが効果的であることを示した実験。

  • Gatcher, S. (2010) “Do Incentives Destroy Voluntary Cooperation?”

非営利組織におけるインセンティブ向上についての実験を行った。非営利組織においては、implicit incentiveが重要であり、explicit incentiveが特別にimplicit incentiveを破壊するという事例は見られなかった。

  • Gneezy, A., Gneezy, U., Nelson, L. D. and Brown, A. (2010). Shared Social Responsibility: A Field Experiment in Pay-What-You-Want Pricing and Charitable Giving. Science, 329 (5989), 325-327.

遊園地などの写真販売において、固定の価格ではなく、消費者が自由に価格を設定できるようにした場合、どちらの方が利益率が高くなるかを示す。特に写真販売と寄付金をセットにした場合に、利益率が向上する。

  • Yan Chen, F. Maxwell Harper, Joseph Konstan, AND Sherry Xin Li (2010) "Social Comparisons and Contributions to Online Communities: A Field Experiment on MovieLens," American Economic Review.

組織におけるメンバー間のバックグラウンドの違いに基づいた協調行動についての実験を行った。人種及び大学への帰属意識に関するプライム効果を導入することにより、協調行動の変化を見た。その結果、アジア人の方が協調性が高いなどの結果が出た。