Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

「便りがないのは良い知らせ」をインターネット時代にどう実現するか


昨年夏の壮行会でも申し上げたのですが、今回の渡米で自分自身のaffiliationをどれだけ再構築できるか、というのは自分自身の今後にとって極めて重要な試練だと思っています。私は結果的に、学生・教員合わせて随分長い期間、慶應義塾にいて、私の持つ人脈がどうしても慶應義塾関連に依存してしまっています。そのお陰で素晴らしい人脈が出来て、自分の人生にとっての財産ですし、本当に幸せなことだと思っていますが、自分自身が新しいチャレンジをするにあたっては、決してその人脈に依存し続けることは好ましくないと思っています。そんな訳で、7月末の壮行会でも、自分の今持っているaffiliationを再構築したい、と皆さんに申し上げました。その実現のために、日本で抱えていた多くのプロジェクトの関係を切らせていただきましたし、アメリカでの新しい生活に合わせて、コミュニティの多くの方とも、特にアメリカでの生活とコンフリクトが発生してしまう可能性のありそうな関係性については、距離感をとらせていただきました。


実はこのことを申し上げた理由は、もう一つあります。日本では自分の人脈を広げすぎて、自分をとりまくコミュニティと自分自身がどう関わっていくかが自分でも分からなくなっている状況でした。もっと言えば、身動きができなくなって、不自由で息がつまりそうな状況でした。私自身本当に日本でのコミュニティでの仕事は楽しんでましたし天職だったと思います。でもそれと同時に、大きなストレスも抱えていました。そんな中で、海外に行くことによって、もう1回自分と周囲の人間関係について考えてみたい、という強い願いがありました。


さて、アメリカに来て半年弱立ち、こちらでの人脈にも恵まれ、一歩一歩ではありますが、人生を豊かで実りあるものにすることが可能なつながりができ始めています。日本にいたときの反省も含めて、人脈の拡大もmoderate modeで無理のない範囲で一歩一歩と思っています。コミュニティの重荷からも解放して生き生きとした毎日を送っています。そして何よりも恵まれているのは、こちらの生活でも自分を厳しく叱ってくれる方、指導してくれる方が見つかりつつあることです。もちろん、自分自身が新しい環境でどのように振る舞っていけばいいのかはまだ試行錯誤で、ストレスフルな状況ではありますが、一歩一歩こちらに適応できつつあるように思います。学業以上に自分が修行しないといけないことだらけですが。


日本でお世話になった皆様からすると、私自身はまだまだ未熟で、頼りないところだらけで、改善すべきところだらけに映るのだろうと思います。でも、日本で目指してきたことと、今こちらで目指していることは明確に違います。こんな私ですから、いつまでも私に関心を持って下さるとは思いませんが、もし関心を持って下さる方は、どうか遠くから見守っていただけますと幸いです。新しい生活では新しいメンターを自分の力で見つけていくことも自分の成長において大事だと思っています。自分自身のメンターを意識的に定期的に変えていくことも、視野を広げる秘訣であろうと思います。


壮行会のときに、"I Shall (Not) Return."という表現を使ったのは、こちらで修行していつかまた皆様のところに戻ろうと思います、という意思は持っていません、ということです。これから一歩一歩修行していく中で、また多くの皆様とのクロスロードがあればと思っています。でも、日本にいたときに自分がいたコミュニティというのは、今までの環境を自分が戻る場所としてとらえている訳ではない、ということをどうか改めて明言しようと思いました。


もちろん、これからの私の活動の中でお仕事をご一緒させていただく方は、今現在もこれからも多数いらっしゃると思います。私からも積極的にコラボレーションのお願いをさせていただきます。また何かご一緒にしたら面白そうなことがあれば、ご遠慮なくお声をおかけ下さい。もちろん、日本にいたときとこちらでは、やっていることが違いますので、今の私の活動とfitするものでのコラボレーションということになりますが。またもちろん時間の許す範囲では飲みにいったり、一緒に遊んだりということもできればと思います。でもそれは全て、過去を振り返るものではなく、未来のために、と思っています。


渡米にあたってaffiliationの再構築をしたい、と申し上げたのは、こんなことを自分自身チャレンジしたいと思ったからです。こちらに来て私の価値観が変わったと言われることもありますし、実際私自身成長することに必死ですので、価値観で変わったことは多々あると思います。ただ、その根本にあるのは、今までの延長線上の成長ではない形の成長をチャレンジするために今の自分がある、という価値観で、ここは全くぶれていませんし、これからも大切にしたいと思います。


インターネットがあると昔と違ってどうしても距離感の取り方が難しい。昔のように「便りがないのが良い知らせ」などという概念はなくなりつつありますよね。そんな中だからこそ、インターネットがあって、情報共有を適切にとりつつも、常に世界が広がる努力が続けられる環境作りにチャレンジしたいと思います。