Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

行動経済学の研究拠点としてのRady School of Management


カリフォルニア大学サンディエゴ校のビジネススクールであるRady School of Managementは、行動経済学の研究者の集積にもなりつつあります。


行動経済学とは、伝統的な経済学は、人間の合理性を前提としていたのに対し、実際に人間の行動は、非合理であることを、心理学の観点から実証している学問です。2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンは、行動経済学の第一人社として有名です。ちなみに、Rady SchoolのProf. David Schkadeは、このカーネマンと共同研究をしていて、いくつかの論文をまとめています。


ダニエル・カーネマン心理と経済を語る

ダニエル・カーネマン心理と経済を語る


行動経済学は、経済学に新しいパラダイムをもたらしました。その成果は経済学に留まらず、経営学においては、マーケティングや組織論に大きな影響を及ぼしています。人間の購買行動の分析、人間のインセンティブの分析など、行動経済学の分野は多岐に渡ります。


Rady Schoolにおける行動経済学のグループのリーダー的存在は、Prof. Uri Gneezyです。Prof. Gneezyによる、"Fine is Price"というタイトルの研究は、行動経済学の本でも頻繁にとりあげられています。Prof. Gneezyを中心に行動経済学の研究グループは活発です。


ところで、行動経済学の本で最も著名なものは、ダン・アリエリーの「予想通りに不合理」でしょう。この本は、行動経済学の最新の研究成果を、読み物としてまとめています。この本には様々な研究成果がまとめられており、巻末にはアリエリーの共同研究者がまとめられています。このうちの3人は現在Rady Schoolに
所属しています。


予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版


Rady Schoolの1階には、実験用のラボがあり、行動経済学の研究メンバーが常時様々な実験を行っています。研究セミナーには、米国でも著名な行動経済学の研究者が頻繁に訪れて研究発表を行っています。


私の専門は、直接的には行動経済学そのものではありませんが、こういった刺激を受ける環境によって、行動経済学への興味も深まりつつあります。