Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

世界で通用するグローバル言語としての「日本語」

日本語の重要性が下がっている?

2012年7月から楽天は社内の公用語を英語に切り替えました。その他の企業も、追随する形で、社内の公用語を英語に切り替えたところもありますし、管理職への昇進の条件にTOEICの点数を課しているところもあります。社内の公用語の英語化はグローバルに人材を採用していくために必要であると同時に、英語があまり得意ではない日本人が無理して英語でコミュニケーションをとろうとすると業務の生産性が下がる、という指摘も少なくありません。

そんな時代の流れに巻き込まれいてる日本のビジネスマンの多くは、グローバルなビジネスにおける公用語は英語であり、日本語は役立たないと考えているのではないでしょうか。もっと言うと、日本語を使えることは、グローバルなビジネスにおいて何も役立たないと悲観的にかんがえているのではないかと思います。

 

日本語って意外とグローバル言語?

昨年夏に私がワシントンDCに出張した際に、UC San Diegoの国際関係大学院 IR/PSを卒業して現在DC在住のスペイン人と韓国人のカップルに出会いました。IR/PSは、アメリカでも数少ない、日本にフォーカスした独自のプログラムを持っています。数少ないというだけであって、IR/PSには世界中から「日本」に興味を持った学生が集まってくるのですが、そのカップルの二人も日本専攻です。さて、その二人とDCで交流していて気付いたのですが、二人とも日本専攻なので日本語が堪能なので、二人の日常会話は基本的に日本語だそうです。スペイン人と韓国人のカップルがワシントンDCで日本語で会話をしながら暮らしている、というのは「ああ、日本語って思った以上にグローバル言語なんだなぁ」と考えさせられました。

さて、そんな感じでIR/PSには日本語を学ぶ学生が沢山いるのですが、世界全体を見たときに、日本語というのはどのくらいプレゼンスがあるのでしょう。実は世界では日本語を学ぶ人口というのは、この20年間でどんどん増えているのです。以下の表は、Japan Foundation 国際交流基金がまとめた、世界での日本語の学習者数の推移を転載したものです(オリジナル:  http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/result/survey12.html )。この図から分かる通り、バブル崩壊後、そして失われた20年と呼ばれる期間にも、日本語学習者は4倍近くに増えているのです。

 

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それでも悲観的な人たちは、日本の学習者が増えているといっても、ほとんどは日本のアニメや漫画に興味をもつ人たちで、ビジネスにとってはあまり意味ないんじゃないか、という反論をするんじゃないかと思います。そこで同じく国際交流基金の調査から「日本語学習の目的」をまとめたグラフを転載します。このグラフを見て分かる通り、もちろん、「マンガ・アニメ・JPOP等が好きだから」という理由は上位に来るものの、それでも最上位は「日本語そのものへの興味」なのです。意外と日本語もグローバルに捨てたものではないのです。

  

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以下の表は、Bloombergがまとめた、世界でビジネスで使われている英語以外の言語のランキングです (オリジナル: http://www.global-lingo.com/wp-content/uploads/2011/09/The-Languages-of-Business-Bloomberg.pdf)。この表では、日本語は8位にランキングされています。これを高いと見るか低いと見るかは人それぞれだと思います。でも、中国語のように人口の多いものや、アラビア語、スペイン語のように公用語となっている国数が多いものと並ぶ形でランクインされているのは、日本語もまだまだ捨てたものではない、と考えることができるように思います。ちなみにドイツ語や韓国語よりは日本語の方が上位です。

 

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グローバルなキャリアを歩む上で、ビジネスの共通言語はあくまで英語ですから、英語の能力は間違いなく必要でしょう。そして、もちろん中国語の方がグローバルには大切な言語となっています。でもだからといって、日本語はビジネスでは全く役立たないと考える必要もありません。むしろ、日本人がキャリアを作っていくにあたっては、日本語を使えるということを自らのアドバンテージとしてキャリアを築いていくことも必要なのでしょう。日本語を使えるということにはそのポテンシャルがあるんだと思います。