Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

慶應からの交換留学生が日本に帰国するときに贈った言葉

6月に慶應からの交換留学生他が日本に帰国するときに贈ったメッセージ。原稿を残してあったのだけれども、ちょっと改編してBlogにもあげておこうと思います。

 

ちなみにお別れ会のときの写真。なんかちょっとサーカス団というかコミカルな感じ。

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サンディエゴで留学していた皆さんに3点、お伝えしたいことがあります。主に慶應からの交換留学の若い学生向けですが、でもメッセージ的には普遍だろうと思います。

 

1) この留学中に塾生・塾員の皆さんを献身的にサポートして下さる方がサンディエゴ三田会には沢山いらっしゃいました。その恩恵を沢山得てきた人も沢山いるんじゃないかと思います。ぜひ1年間の留学を振り返り、なぜみんなのサポートをしてくれた人が沢山いたのか、ぜひぜひ考えてみて下さい。慶應の先輩はただのお世話好き、と思う人もいるだろうと思います。でも、きっとそれだけではなく、もっと深い思いもあるのだと思います。

宮井さんと艦上リセプションの招待者の議論をしているときのことです。このリセプションは、招待制ですし、平均年齢が高く、それなりの社会的地位のある人が集まる、海上自衛隊のプロモーションイベントでもあります。そんな趣旨から考えると、僕が宮井さんから招待者のリスト作りをお手伝いすることになった後も、僕自身は実は大学生を招待することに躊躇していました。そんな中で宮井さんがおっしゃったのは、「今大学生の彼らは、もちろん今は学生でも、これからもうすぐ社会に出て、社会で活躍する人材になる。そんな彼らこそ大事なんだ。」というような趣旨のことをおっしゃっていました。

慶應義塾というのは、150年以上の間、先輩から後輩への期待の連鎖を紡ぐことで、近代日本の発展に貢献してきた学塾です。アメリカの大学はいくらシステムとして優れていても、こんなようなカルチャーを持っているところはほとんどありません。慶應義塾というのは、そんなグローバルにどこにも負けないカルチャーを持った学塾なんだと思います。

こんな期待を一身に背負っているんだ、ということ、だからこそ、色々な人たちがサポートして下さったんだ、ということぜひ心に刻んでいただければと思うし、海外の大学を経験したみんなだからこそ、慶應義塾のその素晴らしさをこれから誇りにしていって欲しいと思います。そして、サンディエゴ三田会というのは、そのことを感じる良い場だったんじゃないかと思います。

 

2) サンディエゴ三田会では多くの世代の人たちが、お互いに交流している場となっています。でも、三田会というのはあくまで箱で、本当に大事なのは、その舞台装置の上で出会う人と人の個別の人間交際なんだと思います。この留学生活の中で、色々な出会いがあって、その出会いが、今回のfarewellで終わるのか、それともこれから大きく育っていくのか、それは皆さん次第だと思います。

1でお伝えしたように、慶應義塾の社中にいる若手はそれだけでも、先輩からの期待を得ることができます。でもそれに甘えてしまう若手も沢山いることも事実です。皆さんは、このサンディエゴ三田会という舞台装置がなくなったとしても今後につながる関係がもてると思う自信どのくらいありますか?物理的距離が離れたら、関係はどうしても薄くなるので、そのときに、今まで築いてきた人間関係が良く見えるのだろうと思います。そして、その関係作りは、お客さん扱いを受けているうちは、今後につながる関係にはなりません。お客さんで終わらないためにどうすればいいか、一つはどのくらいの期間があった、ということだとも思うし、もう一つはどのくらいその間に相手に対して貢献できたか、だとも思います。

個人的にはより多くの皆さんと、三田会という場がなくても、豊かで実り多い交流を続けていくことができたら、と願っています。

 

3) サンディエゴでの留学生活で、「びっくりしたこと」が沢山あったと思います。そして、ぜひその「びっくりした気持ち」を忘れないでもらいたいと思います。これは文字通り、忘れないで欲しいと思っています。日本社会というのはとても同質性の高いところで、内向きの人も多く、海外で「びっくりしたこと」を忘れさせる魔力を持っているところだと思います。日本で生きていて、「びっくりしたこと」を忘れないというのは、アメリカ社会で戦っていく以上に、難しいことだと思います。

サンディエゴで出会った若手と日本でたまに会うと、その「びっくり」をすっかり忘れて、すっかり留学前の自分に戻ってる人と会うことがあり、残念な気分になることもあります。

この忘れない力は、自分自身を過信しない方が良くて、何も努力しないと、確実に忘れてしまうものだと思った方が良いと思います。その「びっくり」したことを忘れない一つの方法は、自分自身がこれからどんなネットワークを持って、どんなネットワークの人たちと交流していくか、ということだと思います。例えば2でお伝えしたようなネットワークは、その意味でもとても有益だと思います。

 

そんな訳で、サンディエゴ三田会も今年で50周年を迎えて、9月5日(金)に祝賀会が開催される訳ですが、その祝賀会は、物理的に参加するかどうかに関わらず、サンディエゴ三田会に関わった皆さんが次のステップに進む、良い舞台装置となっていければ良いな、と思っています。

なかなか僕は日本に行ったときは時間の制約も多いので、どこまでうまく時間がマネージできるかは分からないのですが、色々な意味で皆さんとの交流が続くといいなと思っています。

ちなみに、僕自身大学の教員をしていた経験でも、出会ったときは幼いなぁと思っても、2、3年交流しているうちにみんなすっかり大人になって、卒業してからも「仲間」としてつきあっていきたいなぁ、と思う学生ばかりでした。留学で出会った若手も全く同じだと思っています。

これから最後にまた個別に話せる人も話せない人もいると思いますが、いずれにしても、また適宜ご連絡いただければと思います。