Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

「アトムとビットの新しい関係がイノベーションを民主化する」という話

来期のゼミで取り上げてみたいテーマは色々あるのですが、そのうちの一つは「アトムとビットの新しい関係がイノベーション民主化する」という話。いわゆるメーカーズ・ムーブメントはどういう思想や技術背景で成り立っているのか、3Dプリンタがなぜ重要なのか、そしてエコシステムとしての深センはなぜ発生したのか。デザイン思考とも密接につながります。

僕はやっぱり最後、イノベーションというのは一部の金持ちや権威や知識層のものではなく、すべての人が携わることができるものだと信じています。インターネットはそれを実現したし、そのソフトウェアで実現できたことが、今ハードウェアにまで広がっている、という話。

このテーマを考えるにあたってのケースを扱いたいし、深センの専門家をゲストとしてお呼びしたいし、何よりゼミ生一人ひとりにメーカーになって欲しい。早稲田の理工学部キャンパスは、3Dプリンタが使えるようになっているし、ゼミでみんなでものづくりの体験してみたいです。

プレゼンテーションするときも、パワーポイントのスライドを作るような感覚で3Dプリンタでプロトタイプを作れるような能力は必須と思うのです。

さて、この動きを理解するためのおすすめの本はこんなところかと。

 

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

MAKERS―21世紀の産業革命が始まる

 
ビーイング・デジタル - ビットの時代 新装版

ビーイング・デジタル - ビットの時代 新装版

 
民主化するイノベーションの時代

民主化するイノベーションの時代

 
FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)

 
SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

 

深セン出張から学んだこと

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JETROアジア経済研究所「アジアに起業とイノベーション」の研究会の活動の一貫で、1月上旬に深セン・香港に出張してきました。その際に簡単なレポートをまとめたので、ブログにも共有しておこうと思います。インタビューの結果、面白いなと思ったことを箇条書きにしています。

 

  • 深センは20年の間に急速に発展した。常に外部からの人材の流入が続いており、平均年齢は32歳から35歳程度。この人口構成が深センイノベーションを促進している。
  • 深セン流入する人材はほとんどが中国人である。ヨーロッパやアメリカからの流入もRocket Spaceなど一部には見られるが全体として少数。企業におけるエンジニアもほとんどが中国人。
  • ドローン産業は、DJIの一人勝ちである。DJIが苦手な領域であるドローンの産業利用の一部(農業など)に、MMCなどの他の企業が参入している。
  • DJIは名実共に深センのアンカー企業である。ただし従業員のほとんどは忠告人であり、世界からの移民が引きつける仕組みにはなっていない。DJIからもスピンオフベンチャーは生まれているようであり、例えばジンバルの技術などを活用している。テンセントは、深センに本社を持つもう一つのアンカー企業。 
  • 精華大学は深センに拠点を持つ。産学連携の拠点であるが、どちらかというと深センの企業から大学に持ち込まれる案件のプロジェクトが主体。投資機能なども持っている。
  • 深センにおいても、トップ層は大学で米国に留学することが一般的。中国が発展しても、大学は米国にいくトレンドは変化していない。なお、最近は高校、中学などより早いタイミングで米国に移る人も出始めている。ただし、あまり早く渡米してしまうと、中国国内でのネットワークが薄くなってしまう。 
  • 深セン第二世代」という用語がある。親世代は移民で深センに渡り苦労した結果、金銭的な余裕を持つようになった。第二世代は、自分たちは経済的に恵まれているのだから、リスクをとって新しいことをやろうというマインドセットになる。米国に留学して色々なチャレンジをする人が少なくない。
  • もともと深センは、香港との地理的近接性を強みとして発展したが、近年は深センの自立性は高まりつつある。香港は金融のクラスターではあるが、必ずしもイノベーションに強いわけでもなく、香港と深センイノベーション分野の連携はまだ手探り。
  • 香港の大学は中国本土の連携のために深センに拠点を持っていることころが多い。その拠点を使って、中国の補助金などを受託している。

 

以下、深センを学ぶにあたっての参考文献。

 

D09 地球の歩き方 香港 マカオ 深セン 2017~2018

D09 地球の歩き方 香港 マカオ 深セン 2017~2018

 

日々の仕事の生産性を高めるための「遠隔会議用備品」のおすすめ

出張が多かったり、海外の人とのコラボレーションが多いと、必然的にskypeなど遠隔会議が増えてきます。この遠隔会議を如何に効率良くこなすかは、とても大事なノウハウ。マイクとカメラをしっかり用意しておくことは大切です。以下の機器を活用するだけで、遠隔会議の「ストレス」を色々な意味で軽減できます。

 

こちら側の参加者が複数いる場合には性能の良いスピーカーフォンがとても重要です。いくつか試したけれども、これが一番おすすめと思う。

 

こちら側が一人の場合にも、個室で遠隔会議に入れるか限らないので、ヘッドセットは用意しておいた方が良いです。長時間の会議だと、イヤフォンだと耳が痛くなったりもするのでヘッドフォンがおすすめ。またケーブルではなく、bluetoothの方が配線とか気にしなくて快適です。このヘッドセットは折りたたみにもなるのでコンパクトに持ち歩けておすすめ。 

 

もしこちら側が複数参加者がいるときは、PC内臓のカメラでは何人もが写ることはできません。外部接続のウェブカム、いくつか試したのですが、今はこれを使ってみています。このカメラ少し高いですが、広角なのでおすすめ。

LOGICOOL ウェブカム C930e

LOGICOOL ウェブカム C930e

 

 

MBAの学生が修士論文のテーマを考えるために

MBAの学生が修士論文のテーマを考えるためには大枠以下のことを考えてみると良いと思います。

 

まずはじめに、以下のことを考えてみて下さい。

(A)が(B)に与える影響
(C)による(D)の実現方法に関する研究 

修士論文でまとめようとするテーマについて、ABCDに何があてはまるかを考えてみましょう。ちなみに理系でいうところの前者が理学、後者が工学になります。社会科学では強いていえば、前者が分析アプローチ、後者がデザインアプローチになるのだと思います。

MBAの学生はおそらく、この前者と後者両方が答えられることが重要です。前者のみの研究は「実践なき理論」、後者のみの研究は「理論なき実践」になりがちです。

僕にとっての良いリサーチ・クエスチョンはこの前者と後者の両方の視点を持っているものです。

 

さて、上記の穴埋めを考えるにあたっては、以下のような点を考えてみると良いと思います。

  • 社会科学の研究というのは、「針の穴から大きな世界を見る」というプロセスです。「針の穴」が理論で、「大きな世界」が現象。「針の穴」で小さな世界をみてしまうのは、その理論から説明できる力が弱いということです。良い理論というのは、広く色々な場面で応用できる普遍性の高いものです。
  • MBAの学生は実務経験が豊富なので、日々抱えている仕事の中で、人に話したくなるような面白い事例を持っていると思います。もしそういった事例を思いつくときは、まずそのケースの特殊性をどんな理論で説明できるかを考えて下さい。
  • 具体的な面白い事例が思いつかないときは、とりあえず興味を持ちそうな「トピック」と、「ざっくりとした解決したい問」を選んで、関連する論文をいくつか読みましょう。なお、最初の読むべき論文は、自分で探すよりも、指導教員なり、その分野に詳しい人におすすめの論文を聞いた方が良いです。最初はあまりにも土地勘がないと思うので、あまり重要ではない論文を読んでしまい、時間を無駄にする傾向があります。
  • アカデミックな論文を読んでみて、自分が経験した実務とあてはまらないな、と思ったときはチャンスです。なぜ当てはまらないのか、考えてみましょう。その論文の前提条件があてはまらないことが考えられます。そうすると、どういう場合に当てはまるのか、どういう場合にあてはまらないのか、ということを整理するだけでも新しい仮説となります。
  • アカデミックな論文をいくつか読んでいて、複数の矛盾する理論を見つけたときもチャンスです。その二つの矛盾を説明する仮説を考えることができます。
  • 興味ある分野のデータセットに最初にアクセスしてみる方法もあります。そのデータセットをみながら、他のデータセットの組み合わせなどを考えつつ、何を検証できそうか、仮説を考える方法です。

 

修士論文に取り組み始めた後、色々な教員があったときは、ぜひ以下の質問をしてみて下さい。

  • 「あなたにとっての良いリサーチ・クエスチョンの条件は何ですか?」: この質問をすると、それぞれの研究者の個性がとっても良く出てくると思います。
  • 「私のトピックや問題意識に関連しておすすめの論文はなんですか?」: この質問をすることで、自分の読むべき文献がわかるし、色々な教員に聞くと、バラバラの論文をおすすめすると思うので、視野が広がります。せっかくビジネススクールには色々な先生がいるので、指導教員ばかりの視点になってしまってはつまらないから、ぜひ積極的に色々な先生に話を聞いてみることをおすすめします。

MBAの学生が修士論文をまとめるにあたって読むべき研究手法の本

WBSMBAですが修士論文が必修です。ゼミを中心に、学生の皆さんの修士論文を手厚くサポートします。このプロセスを通じて、皆さんのMBAでの2年間の学習をより強いものにするための仕掛けです。米国の大学にある"Capstone Course"の位置付けです。

でもMBAの皆さんは、修士論文でどんな論文を書いて良いか、特に研究手法で悩むと思います。

そこでいくつかのおすすめの本をまとめたいと思います。

 

まずMBAの学生向きに書かれた研究手法としてもっともおすすめなのか、この本です。あまりアカデミックな領域に深く踏み込みすぎたくないMBAの学生の方はこの本をベースに修士論文を考えると良いと思います。

ビジネス思考実験

ビジネス思考実験

 

 

定量分析の研究をやってみたい人は、以下の2冊はぜひ押さえて下さい。

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

 
データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (光文社新書)

 

 

定性分析の研究をやってみたい人の定番はこの本だと思います。 

新装版 ケース・スタディの方法(第2版) (bibliotheque chikura)

新装版 ケース・スタディの方法(第2版) (bibliotheque chikura)

  • 作者: ロバート K.イン,近藤公彦
  • 出版社/メーカー: 千倉書房
  • 発売日: 2011/08/22
  • メディア: 単行本
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もう少しアカデミックに社会科学の研究手法を学んでみたい人はこの本。

社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論

社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論

 

 

この本は英語しかないのですが、実験及び擬似実験を学ぶための定番。因果関係の推論をしたいのであれば、実験とは何かを理解することがとても大事です。定性分析をするときですら、実験とは何かが頭に入っていると、論文の質が大きく変わります。

Experimental and Quasi-Experimental Designs for Generalized Causal Inference

Experimental and Quasi-Experimental Designs for Generalized Causal Inference

 

 

 

 

シリコンバレーを活用する! (2018年度春学期全日制グローバル・ゼミ)

 

色々悩んだのですが、来学期の全日制グローバルのゼミは、「シリコンバレーを活用する!」をテーマにしようと思います。シリコンバレーのダイナミズムや仕組みを学んで上で、個々人が自分のビジネスにシリコンバレー(や世界のクラスター)を活用するための方法を身につけてもらうことを目的とします。

ベンチャー企業や大企業によるシリコンバレー(やその他の世界のクラスター)の活用を考えるだけではなく、日本の中小企業とシリコンバレーがどんな形で連携できるか、という点も考えてみたいと思います。特に事業継承枠でいらっしゃる学生の方には、自分の抱えているビジネスのシリコンバレーの有効活用へのプランを立ててもらいたいと思います。

 

授業の概要:

Silicon Valley has been the iconic innovation cluster. In this zemi, we will discuss the innovation system and the role of the cluster using Silicon Valley as a case study. we will cover not only Silicon Valley but also compare with other innovative clusters. We aim to understand the mechanism and dynamism of Silicon Valley for students to plan how they can use Silicon Valley for creating new businesses.

 

輪読しようと思っている文献リスト:

[Basics of Cluster]

  • Arthur, W. B. 1994. Increasing returns and path dependence in the economy. University of Michigan Press.
  • Feldman, M., J. Francis, and J. Bercovitz. 2005. Creating a cluster while building a firm: Entrepreneurs and the formation of industrial clusters. Regional studies 39:129-141.
  • Marshall, A. 1890. The Agents of Production. Land, Labour, Capital and Organization. Principles of Economics: an introductory volume. London, UK et al.: Macmillan and Company.
  • Porter, M. 1998. Clusters and the new economics of competition. Harvard Bussiness Review, Nove. Dece.
  • Raffaelli, R. L. 2014. Mechanisms of Technology Re-Emergence and Identity Change in a Mature Field: Swiss Watchmaking, 1970-2008.

[Knowledge Flow in the Cluster]

  • Bathelt, H., A. Malmberg, and P. Maskell. 2004. Clusters and knowledge: local buzz, global pipelines and the process of knowledge creation. Progress in human geography 28:31-56.
  • Chesbrough, H. W. 2006. Open innovation: The new imperative for creating and profiting from technology. Harvard Business Press.
  • Kenney, M., D. Breznitz, and M. Murphree. 2013a. Coming back home after the sun rises: Returnee entrepreneurs and growth of high tech industries. Research Policy 42:391-407.
  • Lamoreaux, N. R., D. M. Raff, and P. Temin. 1999. Learning by doing in markets, firms, and countries. University of Chicago Press.
  • Lamoreaux, N. R., and K. L. Sokoloff. 1999. Inventors, firms, and the market for technology in the late nineteenth and early twentieth centuries. Pages 19-60  Learning by doing in markets, firms, and countries. University of Chicago Press.
  • Mowery, D. C. 2009. Plus ca change: Industrial R&D in the “third industrial revolution”. Industrial and corporate change 18:1-50.
  • Storper, M., and A. J. Venables. 2004. Buzz: face-to-face contact and the urban economy. Journal of Economic Geography 4:351-370.

[Silicon Valley]

  • Brown, J. S., and P. Duguid. 2000. Mysteries of the region: knowledge dynamics in Silicon Valley. The Silicon Valley edge: A habitat for innovation and entrepreneurship:16-39.
  • Kenney, M. 2000. Understanding Silicon Valley: the anatomy of an entrepreneurial region. Stanford University Press.
  • Kenney, M., and U. Von Burg. 1999. Technology, entrepreneurship and path dependence: industrial clustering in Silicon Valley and Route 128. Industrial and corporate change 8:67-103.
  • Lécuyer, C. 2006. Making Silicon Valley: innovation and the growth of high tech, 1930-1970. MIT Press.
  • Saxenian, A. 1990. Regional networks and the resurgence of Silicon Valley. California Management Review 33:89-112.
  • Sturgeon, T. J. 2000. How Silicon Valley came to be. Understanding Silicon Valley: Anatomy of an Entrepreneurial Region:15-47.

[The Role of University]

  • Adams, S. B. 2003. Regionalism in Stanford's contribution to the rise of Silicon Valley. Enterprise & Society 4:521-543.
  • Kenney, M., and D. Mowery. 2014. Public universities and regional growth: insights from the University of California. Stanford University Press.
  • Kenney, M., D. Mowery, and D. Patton. 2013b. Electrical Engineering and Computer Science at UC Berkeley and Silicon Valley: Modes of Regional Engagement. Public Universities and Regional Growth. Stanford, CA: Stanford University Press.
  • Lécuyer, C. 2005. What do universities really owe industry? The case of solid state electronics at Stanford. Minerva 43:51-71.

[Venture Capital Industry]

  • Kenney, M. 2011. How venture capital became a component of the US National System of Innovation. Industrial and corporate change 20:1677-1723.
  • Leslie, S. W. 2000. The Biggest" Angel" of Them All: The Military and the Making. Understanding Silicon Valley: The anatomy of an entrepreneurial region:48.
  • Von Burg, U., and M. Kenney. 2000. Venture capital and the birth of the local area networking industry. Research Policy 29:1135-1155.

[Legal System/Policy]

  • Chander, A. 2013. How Law Made Silicon Valley. Emory Law Journal, Forthcoming.
  • Hart, D. M. 1998. Forged consensus: science, technology, and economic policy in the United States, 1921-1953. Princeton University Press.
  • Suchman, M. C. 2000. Dealmakers and counselors: law firms as intermediaries in the development of Silicon Valley. Understanding Silicon Valley: The anatomy of an entrepreneurial region:71-97.

[Semiconductor Industry]

  • Holbrook, D. 2015. Moore's Law: The Life of Gordon Moore, Silicon Valley's Quiet Revolutionary by Arnold Thackray, David Brock, and Rachel Jones (review). IEEE Annals of the History of Computing 37:98-99.
  • Challenging the Chip: Labor Rights and Environmental Justice in the Global Electronics Industry, edited by Ted Smith, David A. Sonnenfeld, and David Naguib Pellow:170-180.

[PC Industry]

  • Bardini, T. 2000. Bootstrapping: Douglas Engelbart, coevolution, and the origins of personal computing. Stanford University Press.
  • Freiberger, P., and M. Swaine. 2000. Fire in the Valley: The Making of the Personal. Computer 2.

[Internet Industry]

  • Aldrich, H. E. 2014. The Democratization of Entrepreneurship? Hackers, Makerspaces, and Crowdfunding.in Presentation for Academy of Management Annual Meeting, Philadelphia, PA.
  • Cheng, D. 2014. Is sharing really caring? A nuanced introduction to the peer economy. Open Society Foundation Future of Work Inquiry. Retrieved June 3:2015.
  • Levy, S. 2011. In the plex: How Google thinks, works, and shapes our lives. Simon and Schuster.

[Silicon Valley Crones]

  • Breznitz, D. 2007. Industrial R&D as a national policy: Horizontal technology policies and industry-state co-evolution in the growth of the Israeli software industry. Research Policy 36:1465-1482.
  • Chang, S., H.-M. Chiu, and W.-L. Tu. 2006. Breaking the Silicon Silence: Voicing Health and Environmental Impacts with Taiwan’s Hsinchu Science Park.
  • McCourt, J. 2006. Worker health at National Semiconductor, Greenock (Scotland): Freedom to Kill. Challenging the chip: Labor rights and environmental justice in the global electronics industry:139-149.
  • Saxenian, A., and J. Y. Hsu. 2001. The Silicon Valley–Hsinchu connection: technical communities and industrial upgrading. Industrial and corporate change 10:893-920.

 

教科書 

Regional Advantage: Culture and Competition in Silicon Valley and Route 128

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The Silicon Valley Edge: A Habitat for Innovation and Entrepreneurship

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Understanding Silicon Valley: The Anatomy of an Entrepreneurial Region (Stanford Business Books (Paperback))

Understanding Silicon Valley: The Anatomy of an Entrepreneurial Region (Stanford Business Books (Paperback))

 
Making Silicon Valley: Innovation and the Growth of High Tech, 1930-1970 (Inside Technology)

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The New Argonauts: Regional Advantage in a Global Economy

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日本人におすすめなシリコンバレー関連文献 

現代の二都物語

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シリコンバレー―なぜ変わり続けるのか〈上〉

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  • 作者: チョン・ムーンリー,マルガリート・ゴンハンコック,ウィリアム・F.ミラー,ヘンリー・S.ローエン,Chong‐Moon Lee,Marguerite Gong Hancock,William F. Miller,Henry S. Rowen,中川勝弘
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2001/12
  • メディア: 単行本
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シリコンバレーは死んだか

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最新・経済地理学

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誕生日を迎えて - 30代を振り返る

あっという間に40代に突入してしまいました。不惑の年と言いますが、多分人生100年で考えるような時代においては、40歳というのは昔でいうと30歳くらいの感覚に近いのではないか、という気がします。40歳くらいがある程度基礎が固まるような段階で、不惑になれるのは50歳くらいになったときの気がします(言い訳、問題の先送りともいう)。せっかくの機会なので、自分自身の30代を振り返ってみようと思います。

 

今でも30歳になった時のことを思い出します。僕が30歳の誕生日を迎えた頃というのは、慶應の助手・助教になって6年目でした。SFCのインキュベーションのエコシステム構築の責任者としての立場で、それなりに実績をあげていたけれども、このままでは次のステップにいけないと思い、仕事を辞めて博士取得に専念することを決意したのがちょうど30歳になる少し前でした。なので、30歳の誕生日というのは、これから自分がどのくらいものになるかも分からず不安でいっぱいでした。

実はその時にもう一つ自分が決心したことがありました。それは慶應のネットワークの外にでる、ということ。20代の頃のSFCのインキュベーションの仕事はそれなりに実績を出すことはできたけれども、どうしても慶應コミュニティの中で内向きになってしまう側面がありました。慶應のコミュニティは日本社会ではとても強いし、ある意味東大以上に日本社会においてエスタブリッシュメントなので、それがプラスに働くときも多々あります。でも例えばベンチャーイノベーションのような分野では、この慶應コミュニティの求心力が内向き志向を強め、結果的に弱みになってしまう、という側面も感じ始めていました。やっぱりその延長線上では、世界で戦えるレベルの大学のイノベーションを生み出すことはできない、と思ったのです。

30歳の時に自分のレジュメを振り返って、もう一つ感じたことがあります。僕がSFCに進学するようになったのは、高校1年生の時だから15歳です。そうすると30歳の段階で、人生の半分の15年をSFCで過ごしたことになる。レジュメを見ても、学歴も職歴も慶應ばかり。自分自身も慶應に依存しすぎていたと思うし、僕が慶應の中でも求心力を持てるのも、自分の実力というよりも、ただ長くいるから、という理由だったようにも思っています(周りもそう思っていたと思う)。自分のマーケット・バリューが、自分の母校のブランドに依存してしまっている、という状況は、ちょっと脱却しないといけない、と感じてました。

これもう少しいうと、組織依存的な能力を高めるのではなく、もっと汎用的でどの組織でも通じる能力を身に付けたいと思ったということです。

そんなわけで、自分のキャリアのためにも、自分が本当にやりたい仕事を実現するレベル感の意味でも、キャリアとして色々な組織やコミュニティを体験したいと思い、それが結果的に、30歳の時に方向付けた、30代の過ごし方の目標だったように思います。

全てが30歳の時に思い描いたようにスムーズに進んだわけではないけれども、でもスムーズでなかった分、新しい広がりが増えた部分もありました。32歳でUC San Diegoに留学して37歳で博士を取得して、スタンフォード政策研究大学院大学を経て、39歳で早稲田ビジネススクールの准教授になりました。日本に戻ってきても、UC San Diegoで授業を教え続けていたり、海外とのプロジェクトにも多く関わっています。

米国の大学で博士をとると、出身大学でそのまま採用されることは基本ありません。というのは、出身大学の採用は実力というよりも縁故採用の要素が強くなってしまうからです。もっというと、マーケットに出る実力がなかった人が母校に残る、というような見られ方をしてしまいます。その意味でいうと、自分が母校以外で、どれだけ良いポジションを持てるか、というのが研究者としての一つの大事な指標だとも思うのです。多分そのレベルでのマーケットで戦えるような人材でないと、世界で戦えるようなイノベーションを生み出す大学には貢献できないように思います。このグローバルに戦えるようなレベル感の能力を身に付けることができるかも、結果的に組織依存ではない汎用的な能力を身に付けることの必要条件でした。

多分、今の僕をみて、30歳の頃のように、「慶應のことしか知らない人」と思う人はほとんどいないんじゃないかと思います。その意味では10年かかったけれども、30歳の頃に感じていた自分の目標、結構達成できたかな、と思っています。どの大学でも戦っていける自分の力、とても大事だと思っています。

キャリアを考えると、10年くらいのスパンでは、その前にやってきた自分が大事にしてきたことを捨ててでも新しいチャレンジすることってとても大事だと思います。