Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

フジサンケイビジネスアイにて取り上げていただきました


少し前の話になりますが、1月24日(水)に、フジサンケイビジネスアイに私の活動を取り上げていただきました。この記事を掲載していただくにあたって私が作成したオリジナルの原稿をご紹介します。


「異質、多様な交流が新事業を生む」

ベンチャー企業を創業するにあたって一番重要なリソースの一つがネットワーク (人と人との縁やつながり)である、と言われています。創業メンバーを集めること、技術者の発掘、シーズの発掘、アドバイザ、販路の開拓、これらのすべてのことは、創業者がいかに良質なネットワークを構築するか、ということにかかっています。
米国の大学では、大学そのものが新事業創造のハブとして機能しています。これはもちろん、大学そのものが技術シーズを多数保有しているということもありますが、それ以上に重要なのが、大学を基盤としたネットワークを起業家に対して提供していることです。
大学には、シーズ、共同研究先企業、教員・研究者、学生、卒業生、ブランドなど多数のリソースが存在しています。この多様なリソースをつなげるネットワークを、米国の大学では実にうまく提供しています。
私が事務局長を勤める慶應義塾大学SIVアントレプレナー・ラボラトリー(SIVラボ)は、慶應義塾大学をベースに、起業家の皆さんに、良質なネットワークを提供するために構築したものです。その具現化のために、人材育成プログラム、交流イベント、卒業生を中心としたメンター制度、コンテストなど多数の施策を展開しています。過去5年の活動の蓄積で、この仕組みから多数のベンチャー企業が生まれ、またこのコミュニティからのIPOベンチャーも生まれつつあります。
しかしながら、大学のネットワークの一番の課題は、同窓生の参加率がどうしても多くなり、閉鎖的なネットワークとなってしまう、ということです。閉鎖的なネットワークは、ベンチャー企業にとって多様なリソースへのアクセスのチャンスを奪ってしまいます。この問題を解決するために、2005年11月より、SIVラボは三菱地所株式会社の丸の内フロンティアと相互連携いたしました。SIVも丸の内フロンティアも、ネットワークを提供することにより、新たなベンチャーを創出し育成していく、という同じ志を持っています。同じ志を持つ二つのネットワークが、大学を基盤としたリソース、丸の内を基盤としたリソースというそれぞれにとって異質なリソースを持ち寄る。このプロセスを通じて、更に起業家にとって良質なネットワークに発展しつつあります。
SIVラボも丸の内フロンティアもどちらもオープンなネットワークです。ぜひ今後起業を志す皆さんもこの場をご活用いただければと思います。