Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

博士取得へ向けての研究テーマを絞る


博士取得に専念するにあたって、最近一歩づつ研究テーマを絞りつつあります。先日の大学院の会合では以下のようなテーマを発表してきました。今後は、このフレームワークについてどのようなデータをとって証明するのか、ということをもっと具体的に考えていかなくてはいけません。


「大学型インキュベーション・プラットフォームにおける同窓会ネットワークの活用に関する研究」


目的
大学発のベンチャー企業育成を促進するためには、インキュベーション・プラットフォームにおけるアントレプレナーに対するネットワークの提供が重要である (金井他)。しかしながら、プレインキュベーション、インキュベーション、ポストインキュベーションの3段階に応じて、必要とするネットワークの特性が異なり、この特性差が、インキュベーション・プラットフォームのデザインを困難なものとしている。
プレインキュベーション段階においては、ビジネスモデル構築段階なので、ビジネスバリューが不明瞭であり、アントレプレナーと支援者が具体的な価値交換が困難なため、ネットワーク閉鎖論(コールマン)の特性が有効に働く。一方ポストインキュベーション段階においては、ビジネス規模の拡大フェーズなので、ビジネスバリューが明瞭であり、多様性が求められるため、ネットワーク構造的隙間論(バート)の特性が有益に働く。
一方で、同窓会ネットワークの社会活動における有益性をとりあげた先行研究 (黄)においては、同窓会ネットワークは、「ネットワーク閉鎖論とネットワーク構造的隙間論の転換論」で捉えることが可能であることを示す。
本研究は、大学型インキュベーション・プラットフォームにおける同窓会ネットワークの特性について、段階別、用途別に検証することにより、デザインに対する有効な知見を提供することを目的とする。

RQ
RQ1: 同窓会ネットワークは、プレインキュベーション、インキュベーション、ポストインキュベーションの3段階に応じて、そのネットワークの特性を変換しつつ、有効に働く。
RQ2: 同窓会ネットワークは、大学発ベンチャー支援において、「販路開拓」、「資金調達」、「人材獲得」のいずれに有効なのか。(仮説: 販路開拓 > 人材獲得 > 資金調達)


スケジュール

  • フェーズ1 (12月〜3月)
    • 全国大学への同窓会ネットワーク活用調査 (完了) 
    • 代表的な同窓会ネットワーク(筑波大学東京工業大学慶應義塾大学) ヒアリング調査 (完了)
    • 補足調査+論文にまとめる。
    • 仮設の構築。研究計画書(10枚程度)のとりまとめ。インフォーマル発表用。
  • フェーズ2 (4月〜6月)
    • 慶應義塾大学の卒業生2000人に対する「ビジネスにおける同窓会ネットワークの活用」に関する調査の調査票作成、配布、分析。
  • フェーズ3 (7月)
    • フォーマル発表準備+発表


この研究の肉付けをしていくにあたって、今後先行研究のレビューや、調査設計を進めなくてはなりません。このブログでも一歩一歩その状況をまとめていきたいな、と思っています。