Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

「雑用に追われず、自分の好きな学問に没頭できる。これが学生の特権だったんだ。」と改めて認識。

最近の心境

SIV事務局長を退任して、1か月以上経ちました。退任するときは、後ろ髪を引かれる部分がなかったというとうそになります。私自身は、この6年間、大変恵まれた環境で好きな仕事に没頭し、素敵な仲間に囲まれていましたので、それを一気に失うとなると、過去を振り返ってばかりになってしまう生活になってしまうのではないか、という危惧がありました。

でも、いざ新しい生活が始まって見ると、不思議なもんで、1週間もすると、新しい環境に慣れてくるものなのですね。今ではすっかり、新しい生活に慣れてしまい、日々の生活を楽しんでいます。今まで生きてきた30年間の中で、今が一番幸せなんじゃないか、と思います。

どんな変化がおきたか

昨年度から今年度の外面的な変化としては、

  1. SIVの事務局長を退任し、フルタイムの仕事がなくなったこと
  2. 大学における立場が、教員から博士課程の学生になったこと
  3. 授業を担当するために、環境情報学部の講師(非常勤)となったこと
  4. 湘南台の自宅を引き払い、代々木上原の実家に戻ったこと
  5. SFCに行くのは授業のある月曜のみで、それ以外は拠点が都心になったこと

などがあります。

ちなみに、2年前からはじめている日本創生ビレッジ(三菱地所株式会社)のビジネス・パートナーは、引き続き週1日を基本に続けています。

今までよりも飛躍的に時間が自由に使えるようになりました。SIVの6年間は、夜飲み会で家に帰っても仕事、土日も大体仕事ということで、常に仕事に追われていた状況でした。またあれだけ大きなコミュニティを維持・発展させないといけない、というプレッシャーもつらいものがありました。そういった負担からすべて解放されて、自分の時間を確保し、その時間を使いたいことに活用できる、ということは本当に幸せなことです。

仕事をやめるにあたって心配していたことは、「経済的基盤」、「過去の仲間とのネットワークの維持」の2点でした。「経済的基盤」については、日本創生ビレッジのビジネス・パートナーや大学の非常勤講師などのスポットでの収入がいくつかあり、実家に戻ったということで、基本的な生活費については特に困ってはいません。一方で「過去の仲間とのネットワークの維持」という点については、もちろん疎遠になってしまった人も多数いますし、今までのように毎週会うというような関係の人はなくなりましたが、たまにメールのやりとりをしたり、たまにイベントであったり、たまに飲み会をしたり。良い意味で「弱い紐帯」としてのつながりを維持しています。そういった意味で一番心配していたこと二つもうまく回りだしています。

唯一、昨年度から今年度にかけて、変化しなかったことは、飲み会の頻度です。3月の励ます会にいらっしゃれなかった方が個別に飲み会をセットアップして下さったり、SIVのエコシステムから生まれたプロジェクト・組織の個別相談ののったり、ということが多々あります。ただ、さすがに博士論文に専念する身ですので、飲み会の数が減らないことはいかがなものかと思い、また博士の主査からは「博士とれるまで、酒・宴会禁止!」と言われているだけに、4月は退任のご祝儀としても、そろそろこの状況は、変えつつあります。

4月は自宅の引っ越し、環境の変化への適応、過去のネットワークによるご祝儀などがありましたが、そろそろ落ち着いたので、いよいよ研究活動へ向けて本格始動です。

研究者として

私自身、博士論文を主眼として、その活動をするようになって、論文の構想を練っていると、今までのSIVの仕事はいかに頭を使っていなかったのか、と気付きます。また一方で、研究をするにあたっての基礎知識がいかにかけているか、ということを再認識します。ここ1,2カ月はもちろん具体的なアウトプットとしての論文を書いていかないといけないのですが、でもその前に事前に読んでおきたい文献がたくさんあります。過去の6年間も時間を見つけては、文献を読むようにはしていましたが、圧倒的に時間が足りない。ということで時間ができた今、読みたい文献を読みあさっています。時間のあるときは週に10冊くらいのペースで読み進めています。

自宅の研究環境を整えました。今まで湘南台の自宅とSFC-IVにおいてあった本をすべて1か所にまとめています。数百冊の本になるんですが、入れる本棚が不十分だったので、大幅に拡張しました。また研究するための机と椅子を新たに購入し、いつでもデスクトップで論文をかける体制にしました。かなり快適で、最近は自宅にいるのが一番研究がはかどるようになりました。

この1年間は、私が研究者としての基礎を身につける極めて重要な1年間です。将来へ向けてレバレッジのきく基礎固めをがんばろうと思います。

1週間のスケジュール

皆様に、1週間大体どんな生活をしているのか、と聞かれるので、ざっくりのパターンをまとめておこうと思います。

曜日 時間 内容
月曜 午前 大学院研究ミーティング
午後 非常勤講師としての授業、SFC内の教員への研究相談
火曜 終日 自宅 or 東京21cクラブ or SFCにて研究
水曜 終日 自宅 or 東京21cクラブにて研究
木曜 終日 自宅 or 東京21cクラブにて研究
金曜 終日 日本創生ビレッジの業務
土曜 終日 自宅にて研究
日曜 終日 自宅にて授業準備+研究
まとめ

この4月からおかげ様で、本当に幸せな日々を過ごしています。SIVを退任したお陰で、雑用に追われることもなく、自分の本当に好きなことに時間を集中投下することができます。これって、学生の特権なんですよね。私は学部・修士時代、常にプロジェクトを抱えていたので、こういった学問に没頭する時間を持ったことがなかったので、学生の本分の本質にようやく気付くことができたような気がします。人生で特権を持てるチャンスは有限です。そのチャンスをいかに150%有効活用するか、これが人生において本当に大切なことですね。