Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

Sony x Global x Compassion


昨日、米国のソニー本社で開催された震災復興支援イベント、Music for Japanに参加してきました。このイベントは、ソニーの日本人の社員の方が発起人となり、開催されたものです。当日はソニーの社員の方が多数ボランティアとして参加し、またサンディエゴの地域コミュニティの多くの人が無形有形、様々な形で、このイベントを支援していました。

参加していた人は日本人が多かったのですが、でも日本人以外の人も沢山参加していました。ボランティアとしても参加者としても出演者としても。日本が世界からどれだけ強い関心をもたれているのか、と再認識させられます。なぜ日本が世界からこれだけのcompassionを集めることができたのか、その理由について、もっともっと深く考えてみたくなりました。ちなみにこのイベントでは、日本へのcompassionという言葉が、何度も何度も使われていました。日本語でこのニュアンス、何と表現すればいいのだろう。

米国のソニーには、VP for Community Serviceという担当者がいるようで、その方が今回のイベントでは色々な役割を担っていました。彼の言葉の中での印象的だったのは、「ソニーは日本でスタートした会社だから、本社は日本にある」という表現。この言葉は、「ソニーは日本の会社ではなくグローバルカンパニー。でもその故郷である日本は大切」と意味を持っていたように感じました。ちなみにこのイベントに参加してた米国の社長はイギリス人、このVPもニューヨーカーでした。

ソニーはグローバルカンパニーであり、その故郷である日本を大切にするということを、日本人ではない経営陣の人たちが当たり前のように言うということは、実はそんなに簡単なことではないように思います。でも日本発でこのような会社が存在するからこそ、このような災害時に、日本が世界からcompassionを持ってもらえるのだろう、と改めて再認識します。ソニーが日本の会社だと思われていたら、それはcompassionにはならなかったように思います。その意味では、戦後の日本の復興の中で、ソニーを初めとする日本企業がどれだけ世界に貢献してきたか、その貢献が今回の災害におけるcompassionの源泉であるように思います。

プロジェクトXシリーズで僕が最も好きなのは、「町工場、世界へ翔ぶ」というソニーのトランジスタラジオを世界で展開していくことを描いたものです。大学の授業のケース教材としても一時期使っていました。この中では、戦後の復興の中でソニーが日本の誇りを世界に売っていくプロセスが詳細に描かれています。

今回のイベントで、ソニーがサンディエゴという地域で、グローバル企業として活躍していることは、まさに自分が観ていたプロジェクトXでの内容の延長線上の話で、日本人としてもうれしく思いました。



ところで、このVPは、Community Service担当ということで、サンディエゴというコミュニティへの貢献を担当しているようです。日本とは若干違う感覚で、アメリカ社会では、地域コミュニティを大事にします。ソニーアメリカがサンディエゴに立地している以上、当然地域への貢献が求められる。このイベントでは、ソニーは、地域コミュニティの人たちと実にうまく共生していることに気づかされました。司会は地域メディアで有名なキャスターでしたし、出演者も地元のアーティストが多数。スペシャルゲストにも地元の有名人が参加していました。

心は日本にあり、グローバルな視点を持ち、地域コミュニティとの共生する。こんなことを実際に実現しているのがソニーという会社なんだろうな、と思いました。ところで、この「心は日本にあり、グローバルな視点を持ち、地域コミュニティと共生する」、というのは企業だけではなく、グローバルなキャリアを歩む、私たち個人にも言えることなのではないかと思います。下手すると、「心が日本、視点も日本で、戻ることばかり考えて、地域コミュニティにはとけ込まない」方向に流れがちです。実際に実行するのは簡単なことではありません。

日本の災害で、日本が世界からcompassionを得ることができたのは、間違いなく、戦後の復興から今まで世界に大きなプレゼンスを発揮してきた、日本からスタートしたローバル企業の貢献が大きいように思います。そんなことに気づくと、改めて、この日本発の企業を支えてきた先日の方々の皆様のご尽力、ご苦労に敬意を感じますし、もっともっと感謝して日々を歩んでいかないといけないということを痛感します。そして、今、それらの企業の発展に担っている皆様にも。

そんなことに気づかせてもらえたソニーという会社の魅力を改めて感じました。アップルやグーグルのTシャツ、パーカーばっかり着ないで、ソニーの服も着てみようかな。(誰かプレゼントして!)