UCSDと日本研究
UCSDに来るまで、全く思いもよらず、こちらに来て感じているのが、UCSDというのは、日本研究をするのに最適な場である、ということです。Rady School of Managementの隣に、IR/PS (International Relations / Pacific Studies)という学部があり、ここには日本研究のグループがあります。
先日、立命館大学の樋原さんがスタンフォードのカンファレンスの後にUCSDにいらした際に、「UCSDを留学先にしたのは正解だと思う。日本研究との関わりが持てるから。」という言葉をいただいて、今まであまり深く意識していなかったのですが、確かにその通り、と思うようになりました。ちなみに、今や米国で日本研究を今しっかりやっているのは、コロンビアとUCSDくらいだそうです。
もともと、IR/PSのウリケ・シエデ教授(いつもウリケさん、と呼んでいます)とは、こちらに来るはるか前から、スタンフォードと東大の共催のシンポジウムで出会って以来、研究テーマが被るところもあり、親しくおつきあいさせていただいていて、UCSDに来るにあたっても、様々なサポートをして下さいました。こちらでも、日本のイノベーションやアントレプレナーシップを考えるグループを作っていて、ウリケさんも積極的に関わって下さっています。僕にとってIR/PSとの関わりは、ウリケさんの存在があるからこそ、成り立っています。
そして何より、IR/PSの最大の魅力は、経済学者として著名な、星岳雄先生がいらっしゃることでしょう。星先生を中心にIR/PSの日本研究の拠点は、日本から多数の留学生を引きつけ、日本に興味のある世界の学生を引きつけ、そして現在の日本のリーダーたる方々が頻繁に来訪しています。
私が留学をするプロセスの中では、イノベーション研究をするにあたって、日本という強みを押し出しても、admissionのプロセスで興味を持ってもらえることは稀なので、むしろ日本という切り口を捨てて、どう研究者として戦っていくか、ということを考えてました。でも、実際こちらに来てみると、自分自身の過去のイノベーションの実体験は日本であったし、何よりも米国と日本を比較することで分かることが如何に多いか、そしてその切り口が自分の強みになる、ということに気づかされます。自分の軸は大きく変わることはないものの、日本研究も横軸として持とうと思いつつあります。
こちらにいると、日本にいる以上に、著名な方のお話をお聞きする機会があります。この1年でも、元横浜市長の中田さん、衆議院議員の河野太郎さん、エコノミストの翁百合さんがIR/PSにいらっしゃって、私もその交流の場に参加させていただきました。
今回、翁百合さんは、ウリケさんがホストとなっていらしたこともあり、私が主催する交流会にもご参加下さって、それがきっかけとなって随分色々な話をさせていただきました。慶應義塾の先輩でもあり、慶應義塾の話から、日本経済、イノベーション、労働市場、世代間格差など多岐に渡る話題についてお話させていただきました。加えて、私は色々な世代と交流をしてきたものの、実は40代後半から50代前半くらいの世代の方と直接ゆっくりお話する機会が少なく、この世代で日本でどのような方々が活躍なさっているのかを肌感覚で感じる機会となりました。
私は、自分の興味が広がるプロセスというのは、そのテーマそのものに興味を持つというよりも、人との出会いで、その相手のことに興味を持った瞬間に、その相手のテーマにも興味を持つという傾向があります。今回翁さんとお目にかかって、すっかり金融政策にも興味が出てきました。イノベーションを考える上で、金融政策は極めて大事なテーマ。私は今まで意識的に、金融政策は自分のテーマの中核には据えていなかったのですが、これを機に、もっと深く学んでみようと思いました。
それにしても今回翁さんとは、交流会でご一緒したり、別の機会に食事をご一緒したり、そして偶然帰国日が被り、ラウンジやら移動中にお話させていただいたり、多くの時間をご一緒させていただいて、本当に刺激的でした。
こういった出会いがあり、自分自身の日本研究のテーマを深めていくことができるのも、UCSDにIR/PSがあるからで、その意味で、自分の環境が如何に恵まれているか、と改めて思いました。
翁さんの著作も早速購入したので早速読んでみようと思います。
- 作者: 翁百合
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
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