Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

Babson Fellows Program for Entrepreneurship Education 参加報告

11月上旬に参加したBabson Fellows Program for Entrepreneurship Educationについて、スポンサーへの報告書をまとめたのですが、この内容多くの皆さまに共有すると良いと思うので、ブログにアップします。

実はこのプログラムに参加したことで、自分がどんな教育プログラムを作って行くべきなのか、色々と価値観の変化もありました。今やっている一つ一つの仕事、来年度どんな授業をやりたいか、色々考えさせられました。

この中でもとっても大事なのは、ミレニアム世代やジェンレーションZ世代のことを本当に真剣に理解して、その価値観を考えているのかということや、自分が授業をやっている中で、ちゃんと履修する学生のペルソナをイメージして授業設計できているのか、などなど。

大学にいると、自分が好きか嫌いか、自分が教えたい内容を一方的に学生に押し付けていないか、学生が学ぶチャンスを考えないような自己都合の課題を出していないか、とっても色々なことを自戒を込めて考えさせられました。

こういう感覚をこれからどれだけ持ち続けていけるかが勝負だなぁ。その感覚を自分がどんどん失っていきそうで、とっても怖いです。

 

1. 概要

日時: 2018年11月4日(日)-9日(金)

場所: Babson College

目的: アントレプレナー教育を担当している者を対象に、Babson Collegeを事例として学びながら、大学を基盤としたエコシステムの構築法について学ぶ。そのプロセスを通じて、メンターのサポートのもと、具体的なプロジェクトの提案をまとめ発表する。

 

2. プログラムのトピック

  • Teaching Entrepreneurship of All Kinds & Program Overview
  • The Practice View of Entrepreneurship Education
  • Building a Learning Community
  • First Meeting with Babson Faculty Mentors
  • Classroom Observations
  • Babson’s Undergraduate Signature Entrepreneurship Course: FME
  • FME Class Visit
  • Attend Babson’s “How 2 Tuesday”
  • Classroom Observations
  • How Learning & Education Research Should Inform Entrepreneurship Pedagogy – A Discussion Session
  • How Learning & Education Research Should Inform Entrepreneurship Pedagogy – A Creating Session
  • MassChallenge Boston Excursion
  • The Co-Curricular Experience: A Conversation with Center Directors
  • Teaching Choices: Lessons from a Master Teacher
  • Babson Rocket Pitch Event
  • Tour of Weissman foundry and a Conversation on Maker Pedagogy
  • Action Project Presentations

 

3. このプログラムから学んだこと

 

[学内のアントレプレナーシップに関する4つのセンター]

学内のアントレプレナーシップに関する4つのセンターの責任者が集まって、それぞれのセンターの概要説明が行われました。4センターの責任者はすべて女性。この4センターが、エコシステムの発展にうまく寄与しています。この辺りのセンターの構成がとても適切にchoose and focusされていると感じます。

4センター

  • ”Blank Center for Entrepreneurship”
  • “Center for Women’s Entrepreneurial Leadership”
  • ” Lewis Institute & Social Innovation Lab”
  • “Institute for Family Enterprise”

[フラッグシップ授業”Foundation of Management & Entrepreneurship”の概要説明と見学]

Babson Collegeの学部生のフラッグシップ授業である”Foundation of Management & Entrepreneurship”の概要説明を受け、実際に授業の見学をした。

学部1年生が全員必修であるこの授業は、1年間かけて実際に大学から出資を受けて、ビジネスを立ち上げて、回すとことを経験する構成となっている。各回の授業ではそのプロジェクトを運営するにあたって必要な知識を学ぶ構成になっている。このような授業を全員必修で行うことは、大学としてどう教育を差別化していくかという覚悟を感じる上でもとても有益であった。

 

[Rocket Pitch 2018への参加]

Babson Collageでは年間を通じて、アントレプレナーシップに関連するイベントが多数開催されている。その中でも最も重要なイベントの一つが”Rocket Pitch”であり、このプログラムの見学を行った。

この”Rocket Pitch 2018”は、学部生、大学院生、卒業生が参加し、ビジネスアイディアを3分間でプレゼンするというイベント。多様なバックグラウンドの方々が多数集まっていた。日本人のMBA留学生も発表を行っており、学生にとっても良いspringboardの場となっていることを実感した。

 

[授業履修者のペルソナをまとめるワークショップ]

自分の授業を履修している学生のペルソナをまとめてみるワークショップが行われた。自分が教えている授業は自分が受けたい授業ではなく、このペルソナが受けたい授業になっているかという問いかけに基づいた議論。教員は自分のニーズで授業をやってしまいがちなので、自分の授業スタイルを見直す、とても良い機会となった。

 

[ジェネレーションZ世代とミレニアル世代への対応]

授業を担当するにあたっても、今の学生世代のニーズは急速に変わりつつある。その世代がどのようなニーズを持ち、どのように学んでいくのか、という傾向の解説が行われた。

そもそも大学に行く必要を感じていない、スマフォは体の一部で依存していることすら感じない、スマフォもテキストより動画で会話する方が一般的、などステレオタイプも含まれているとも思うが、一定の説得力があった。

現在は、世代の価値観が違う中で、4つの世代が一緒に仕事をしていく時代となっている。古い世代の価値観を押し付けるのではなくて、新しい世代の価値観を積極的に理解できるようになることが必須。教員と実際に授業を受ける学生は、「世代」が違うので、その特性が違うということを前提に授業を行うことの重要性を考えさせられた。

 

[人的ネットワークの重要性の教え方]

人的ネットワークの重要性をどのように教えるかというセッション。事前課題に指定された"Understanding Your Networking Personality"という文献。

個々人のネットワークへの関与を、the Loner (little or no networking)、the Socializer、the User、the Relationship Builderの4つに分類。ネットワークを持っていても一方的に相手を利用するだけの人(中期的にネットワークを失っていく)、ネットワークを持っているつもりでもいてもただ名刺交換しているのみで役立つネットワークになってない人などの紹介が行われている。

ここで言われる”Relationship Builder”になることが重要であり、その特性を考えるワークショップが行われた。

 

[「人はどのように学ぶのか」というセッション]

”人はどのように学ぶか“という理論を理解しなければ、良い教育はできない。”The New Science of Learning”という本をベースにしながら、人の学習を促す要因、邪魔する要因などが解説された。例えば、学習の理論で五感を活用することが大切というものがある。その中でも聴覚はあまり効果がなく、視覚と嗅覚が大事という説が提示された。

その内容に基づいて、個々人が今までの授業で自分が学生の学習を邪魔した事例を相互に告白。その後、この理論を使って今までやっていた授業をre-inventして、そのプロトタイプを作るという課題が出された。

僕は、この理論を活用して、デザイン思考のワークショップをre-inventすることにしました。プレゼントを贈る体験とか財布をデザインするのではなく、食べ物をデザインしてプロトタイプを作るというワークショップが行われた。

 

[Pitch練習のウェブ・サービス]

ピッチ/プレゼンの練習するウェブ・サービスが存在し、授業などでも紹介しているとのこと。

サイト: https://www.pitchvantage.com/

説明ビデオ: https://www.youtube.com/watch?v=ZGp5mI_ALK0&feature=youtu.be

 

[Makers Spaceの見学]

学内にあるMakers Spaceに見学に行き、Makers Spaceとアントレプレナー教育がどのように融合できるかという議論を行った。ただし、この課題はどこもまだまだ発展途上であり、具体的な解決方法はそこまでない、ということが分かった。

 

[Executive Ph.D. Programの存在]

この研修に参加し、数年前は今ほど聞かず、最近増えつつあるのは、Executive Ph.D. Programの存在。Babson College自体はPh.D. Programは持っていないが、今回の研修の参加者の大学で多数行われている模様。ビジネススクールにおけるExecutive Ph.D. Programというのは、通常のPh.D. Programと違い、働きながらを同時にしており、ある程度のビジネス・キャリアを積んだ方が対象。MBAFlex Programの後継というべき位置付け。ビジネススクールの役割を考えていく上でとても大切の示唆であった。

 

4. 最終課題の発表内容

1週間の研修の最終課題は、自分で新しいアントレプレナーシップのエコシステムに関するプロジェクトの立ち上げの企画を立てて、色々なアドバイスをもらって、最後日にピッチをするというものであった。

私の提案の概要は以下の通り。

  • 現在のMicroMBAは、理工学部ビジネススクールが連携し、国内の参加している各拠点が参加できるようにオンラインでの実施、VirBelaを含めた遠隔講義のシステムを活用。
  • この枠組みの中で、いかにして、サイエンティスト、エンジニア、アントレプレナーが相互に学び協力を促すようなコンテンツを開発するかが課題である。それと同時に、グローバルな環境の中で、アントレプレナーシップ教育のフロンティアを追求していくことが重要である。
  • 本プログラムでは、アントレプレナーが実務に活用可能な「実験」の手法を提供することを目的とする。授業において、「実験」という手法の有効性について、ケース・ディスカッションを通じて示した上で、具体的な「実験」のデザインの手法を学ぶ。
  • 2019年春に、ゼミなどでトライアルを行った後に、2019年9月にMicroMBAとして授業を実施することを目指す。
  • このプログラムの準備にあたっては、 1) 授業コンテンツの調査の相互協力、2) 「実験」のデザイン手法を学ぶためのコンテンツ・デザイン、3) MicroMBAの講師としての協力、 4) MircoMBAの学生の参加、などの連携を他の参加者に提案した。