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Science, Technology, and Entrepreneurship

政策研究大学院大学助教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

「構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌」

書評

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌


最近ふと今までと違う分野の本を読みたいと思い、成田空港で購入した一冊。竹中平蔵氏の大臣5年間の体験をまとめています。もともと竹中さんは私が学部の頃、SFCで教鞭をとり、私自身「マクロ経済」、「ミクロ経済」、「社会経済システム論」(ちなみに、授業で配布したシラバスのタイトルが「社会経済テムテム論」となっており、しばらくの間、学生からはこの授業のことを「テムテム論」と呼ばれていた)などを履修していました。SFC教員の中でも学生から最も人気のあった教員の一人で、毎回授業が終わる度に学生から必ず拍手が起きる授業は竹中さんくらいだったように思います。

私が大学に入学した頃の竹中さんは、当時はまだ普通の大学の教員という印象でした。それが小渕内閣の経済戦略会議メンバー、森内閣のIT戦略会議のメンバーなどを経て、どんどん国の政策の中枢に行くことを目の当たりにしてきました。私が修士1年のときに、小泉内閣が発足し、経済財政担当大臣に就任しました。自分自身が大学時代に経済学を習っていた教員がそのまま大臣になって国政を担う、というのは少なくとも国政が身近に感じる良いきっかけでした。

ちなみに、竹中さんが大臣就任後に、ただちにはじめた政策に「タウンミーティング」と「メルマガ」がありましたが、どちらも私の知り合いのSFCの学生が竹中さんに提案したアイディアが国政に実現したもので、こういったところからも国政が身近に感じられるようになりました。


この本は、その大臣としての活動の5年間についてまとめられています。マスコミの報道は偏りが激しいので、竹中さん自身からの言葉でこの5年間を理解することができて、新たな視点を学ぶことができたような気がします。

私自身がSIVに携わる中でも参考になりそうなことが多数あります。

  • 竹中さんが5年間を通じてミッションを遂行できた背景には、ボスである小泉総理の判断に一貫性があり、決してぶれなかったことが大きいようです。私自身、様々な活動を色々な人と共にする中で、自分自身の判断がいかにぶれないようにするか、ここを改めて考えてみようと思いました。
  • 郵政民営化を含めて、竹中さんが進めた施策は、基本方針のみならず、工程表を含めたアクションプランを竹中さん自ら作成していました。「戦略は細部に宿る」ということで、細部までをきちんと決定してはじめて動く政策になる、というのはなるほどなぁ、と思いました。私自身が今後様々な政策を考えていくにあたっても参考にしたいと思います。
  • 郵政民営化の基本方針を策定するにあたって、最初に国民にとって分かりやすい五原則を定めたことはなるほどなぁ、と思いました。今後慶應義塾全体のインキュベーション施策を考えていくにあたっても、まずこの原則から考えてみようかな、と思っています。
  • 政府という巨大組織を動かしていくということの大変さが改めて伝わってきます。自分の考える施策には必ず抵抗勢力がいるわけで、その抵抗勢力をいかに巻き込みながら、改革を推進するか、という方法論が良く分かりました。
  • 竹中さんが突然大臣を拝命した中で、最初戸惑い苦労しながら、新しいポジションでいかに慣れていくか、というプロセスからも学ぶことが多数ありました。

という訳でこの本は、様々な政策の策定に携わっている人は多数学ぶことがあるので、お勧めです。