Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

The 40th St. Gallen Symposium参加から学んだこと (6) -世界のガバナンスモデルの変化と日本のプレゼンス向上へ向けて-


今回、St. Gallen Symposiumに参加して、すさまじく色々な刺激を受けました。自分自身、グローバルなパースペクティブはある方だと思っていたけど、そのパースペクティブが全然違う次元に変わった気がする。。。。twitterでも色々呟いたけど。ダボス会議に参加してるような人たちがゴロゴロいて気軽に話せる環境でした。石倉洋子さんに人生相談にのっていただけたのは、自分にとっての大きな転機でした。その他、3日目の夜はリセプションで隣に座っていたのが、財務官(仕事内容はwikipediaで確認してみてね)の玉木さんで、ドルが暴落した直後だったからその対応で大変そうでしたが、直接色々なお話しをお聞きできて楽しかったです。

あまりにも学んだことが多すぎて消化不良なんだけど、その後の多くの皆さんとの議論でフィードバックできたことが沢山あると思っています。とてもブログだけには書ききれない。でもこのシンポジウムに参加することで、僕は自分自身のスコープが随分変わったと思っています。

昨今の経済状況は、100年に一度の不況とか言われてるけど、多分今起きてるのは不況なのではなく、100年に一度の世界のガバナンス・モデルの変化なのではないか、と思います。不況は表面上の話しであってそこが本質的に今起きてる変化ではないと思う。既存の世界のガバナンスが機能しなくなってきていて、20世紀に人類が作り上げてきた「システム」がいかに脆弱だったか、ということが明るみになっているだけ。金融システムは、そもそもの社会的役割を忘れてしまった。アイスランドの火山が噴火しただけで、アフリカに物資を輸送できなくなって、アフリカ経済大打撃。Euroを作ってみたはいいけれども、相互にpassionを持っていない国同士が経済的利益で協力してもガバナンスが働かない。ギリシャの財政破たんで、Euroが今後維持できるかどうかも分からない。などなど、本当に明日何が起こるか分からない世界に今生きている、ということを痛感しました。


シンポジウムの最中に私が印象的に感じた言葉でtweetしたものをリスト化してブログにも掲載しておきます。

  • 今回のギリシャ財政危機は、本質的なEUというガバナンス構造の課題を露呈したし、もしかしたらEU崩壊の引き金になってもおかしくない。
  • 金融クライシスが今までの不況と大きく異なるのは、解決すべきプレイヤーがグローバルになったこと。今までは西洋だけで決められていたものが、「西洋独占主義の終焉」により、パースペクティブの変化と、本質的なパワーシフトが起きた中で、問題解決へ向けて、世界が協調しないといけないこと。
  • アントレプレナーシップには、sacrificeの精神がないとダメ。これはプロテスタントの思想と通ずる。
  • 元米国大使「アメリカがなぜ、アントレプレナーシップが盛んな国か。それはアメリカはプロテスタントの思想で、ゼロから建国したことだ。」
  • スイス連邦大統領 「今回の不景気は今までの不景気とは決定的違う。なぜならば、世界が本当にグローバルになって、意思決定をするときのプレイヤーの数が20年前とは全く変わった。全世界を考えて、人口の分散も考えて意思決定しないといけない。」
  • UAE貿易大臣「私は2009年末が景気の底だと思っていた。でもその後にギリシャの破たん、GSの問題がでてきた。これからも何が起きるか分からない。」
  • フランス財務大臣の引用「A woman is like a teabag, you only know how strong she is when you put her in hot water. 」
  • このシンポジウムの中でしめている空気として、もはや「新自由主義」は終焉しているということ。マーケットに任せるのではない、新しい政府の役割が求められてる。
  • 「今、世界で一番ビジネスチャンスが大きい国は、自らが共産主義国と呼んでいるところだ。」
  • 「私は、金融システムは信じるけど、金融商品は信じない。グラミン銀行は、金融システムがそもそも何のために存在するのかを思い出させてくれた。」


このシンポジウムに参加している多くの皆様と交流することで、このコミュニティのキーとなりそうな人とのネットワークがある程度築けました。来年以降、日本からどういう人をspeakerとして推薦するかなど色々なことが仕掛けられそうです。もちろんknowledge poolは私はノミネートはできても、選考はザンクトガレン側なのでpushなどはできませんが、つなぐことはできると思います。

世界から本当に優秀な人たちが集まっているんですが、率直にいって日本からの参加者の全員が必ずしもright personだったとは思えず、日本にももっとtalentedな人たちが沢山いるので、どうやって日本とこのシンポジウムをつないでいくか、考えていきたいな、と思いました。

要は日本社会では個人の中身よりも肩書きで人を判断するけど、中身が伴っていなければ、こういった場では全く相手にされないので、どうやって本当に中身があり、グローバルな場でプレゼンスを出せる人を選ぶのか、というのがポイントです。その人的ネットワークの活性化も、この会議のalumniの人たちと議論してみたいと思ってます。結構このあたりのネットワークは、日本では六本木のアカデミーヒルズに集積してるところもあるのですが、広くdiversityのあるネットワークにしていくことが大事だなと思っています。

日本の肩書き社会は、中身がない人のシールドになってしまっているように思いました。肩書きは、社会システムとして、transaction costを下げるために活用されて良いとは思うのですが、中身と肩書きが見合っているかどうか、これは任用する側と本人の両方の見識が問われていますが、その意識も薄い人が多いように思います。人の中身を見る能力がない人は、肩書きで人を判断するかもしくは人の評判で人を判断する。日本にはそういう人が多いですよね。

St. Gallen Symposiumの帰りの飛行機で、全くプレゼンス発揮できてなかった大手企業の偉い方がビジネスクラスで、プレゼンス発揮してた若手がエコノミークラスだったのですが、一緒にいた若手起業家が、なんであいつがあんなに役に立ってないのにビジネスクラスで招待されるの?逆じゃない?と言ってたりしました。まぁ、僕はどのクラスに乗るかはどうでもいいんですが、そもそもご参加いただかない方が正しい解決策では?という方もいらっしゃるように思います。



三木谷さんと石倉さんと一緒に



財務官の玉木さんと一緒に