研究進める上でのtips
私が研究手法を学ぶ上で、誤解していたことを、以前tipsということでメモにまとめたので、せっかくですから、その内容もblogにupしておこうと思います。岡部先生がまとめられた本からの引用です。総合政策学という学問を作り上げていくための苦悩が良くわかります。といっても、このtipsは、研究を行う上ではかなり基礎的な知識ですが。
- 作者: 大江守之,梅垣理郎,岡部光明
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
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相関関係(correlation)と因果関係(causality)
相関関係 (correlation)と因果関係(causality)は同一のものではなく、区別が必要である。社会現象において、ある事項(変数)と別の事項 (変数)の間に相関関係(correlation)がみられることが多い。しかし、統計的に相関関係があることが示されるとしても、それをもって因果関係 (一つの要因が原因となってもう一つの要因が結果として生じている)とは必ずしもいえない。
たとえば、日本の人口に占める高齢者(65歳以上)の比率と円相場(円/ドル)のここ20年間における相関係数を計算すると、明らかに大きな相関関係が認められる。しかし、このことをもって「高齢化->円高化」という因果関係を結論付けることができないのは明らかである。
見せかけの関係か、それとも真の因果関係か(相関関係と因果関係の非同一性)は常に意識して識別する必要がある。それに関して適切な判断を行うには、それにふさわしい統計的手法の適用を検討するとか、理論的な考察を併せて行う、などの対応が必要である。
確かに、「相関関係」があることを、「因果関係」があると勘違いしてしまう人多いですよね。研究を始めたばかりの初心者にも多いけれども、この「相関関係」と「因果関係」は別物という考え方は、研究者じゃなくても知っておいた方が良い概念だろうと思います。
統計的優位性(statistical significance)と社会科学的優位性(social-scientific significance)の違い
統計分析(回帰分析)における計測式の統計的優位性(statistical significance)と社会科学的優位性(social-scientific significance)は同一のことではないので、両者を区別しなくてはならない。回帰方程式(ある被説明変数をいくつかの説明変数によって説明することを意図した方程式)の計測において、説明変数のパラメーターの符号とその統計的優位性に議論が集中しており、社会科学的意味に関する議論がないがしろにされることが多い。実証分析を行う場合には本来の目的を常に意識することが重要である。
こちらは、やや専門的になりますが、論文を読んでて「統計的優位性」という言葉が出てきた場合、初心者は統計学的に証明されてるんだ、と勘違いしてしまいます。でもそれは、「社会科学的」に本当に優位とは限らないんだよ、という話です。「統計」に騙されないコツ、これは研究者ではない人も必要な知識ですよね。