Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

The 40th St. Gallen Symposium参加から学んだこと (3) -アントレプレナーシップとキリスト教-


St. Gallen Symposiumにて、私自身の価値観が一番変わったのは(もしかしたら変わったのではなく思いだしたのかも知れません)、自分自身の思想の根幹がキリスト教(特にプロテスタント)に基づいているんだ、ということでした。このシンポジウム、テーマがアントレプレナーシップなんですが、端々に出てくるメッセージがどこかキリスト教的で、自分自身の原点はそこだったんだ、ということへの気づきが沢山ありました。

今回のシンポジウムで、印象的だったのは、「アントレプレナーシップにおいて一番重要なのは自己犠牲の精神だ。」、「なぜアメリカが世界で一番アントレプレナーシップ盛んな国になったのか。それは、アメリカは、プロテスタント達によって作られた国だからだ。」という発言です。また、今後の10年間の世界の動きを予測しようというパネルでは、高位の神父も参加してましたが、その中で「宗教ほど、時代に合わせて適合し続けたものはないんだ。」という発言がありました。

少なくとも、西洋がどのように形作られたきたか、そして民主主義、資本主義という思想がどのように生まれたきたかということを考えるときに、キリスト教は切っても切り離せないんだな、と改めて思いました。


幼少の頃私は、クリスチャンの祖母の身近で育ち、キリスト教の幼稚園に通い、教会学校に小学校4年生まで通っていました。そして小5から中3まではイタリア・ローマのアメリカンスクールで過ごしました。そんな育ち方をした私自身の価値観の源泉には、キリスト教の精神が刷り込まれているように思いました。

そこで、祖母に、好きな聖書の句を聞いてみたところ、以下の2つを教えられました。

コリント人への第一の手紙 10章13節

あなたがたのあった試練はみな人の知らないようなものではありません。神は真実な方ですから、あなたがたを耐えることのできないような試練に会わせるようなことはなさいません。むしろ、耐えることのできるように、試練とともに、脱出の道も備えてくださいます。

マタイによる福音書 7章7節-8節

求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。
だれであれ、求める者は受け、捜す者は見つけ出し、たたく者には開かれます。


この二つとも、言葉としては私の記憶にあったもののすっかり忘れていたものですし、今思うと祖母の生き方そのものです。祖母は祖母の母から引き継いだものだそうで、私も少しはこの教えを受け継いでいるのではないか、と感じました。そして、期せずしてこの二つの言葉は、Entrepreneurship そのものなのではないか、と思いました。


自分がなぜ今の仕事をやりたいと思ったのか、何をかえたくて、そして何を正しい信じているのか。その原点を思い出すことができたような気がしています。