アシスタントへの壮行会でのメッセージ
私は最近本当にせっぱつまっているので、外出も控えているのですが、本日は私の仕事でアシスタントをして下さっていた方が仕事をやめて、米国での1年間の転職プログラムに参加なさるということで、壮行会に参加しました。そのときに本人にメッセージを口頭でお伝えしたのですが、その場での思いつきでのメッセージだったため、きちんと伝えきれなかった部分もあるので簡単にまとめておきたいと思います。
今回お別れするにあたって、3つのメッセージを送らせていただきたいと思います。
一つ目は、「忙しさ」という話しです。私は今までいくつかの仕事に携わらせていただいて、何人かのアシスタントの方とご一緒に仕事をさせていただきましたが、その中でもAさんは最も気持ち良くご一緒に仕事をさせていただいた方の一人です。先ほど「無茶な仕事を振られることも多かったけれどもその度にがんばろうと思えた」、とインターンの学生からのメッセージがありましたが、それこそが、Aさんの仕事への姿勢の素晴らしさなんだろうと思います。
「忙しい」という言葉があります。この言葉は、「りっしんべん」つまり「心」が亡くなるという意味を持っています。このチームの皆さんは誰もが「心」を持っているけれども、忙しいときにはどうしてもその「心」を亡くしてしまうときがあります。その中でAさんは極めて忙しい立場であったにも関わらず、決して「心」をなくすことがなかった。これが、Aさんが皆さんから慕われてきた大きな理由であろうと思いますし、最大の素晴らしさであろうと思います。私自身もAさんのその言動からその点について沢山のことを学ばせていただきました。
二つ目は、「海外」で仕事をすることの意味という話しです。今回自らのご希望で海外での1年間のプログラムへの参加を選ばれた訳です。私は大学に長くいるので多数の留学経験を持っている方と出会います。でも同じ留学体験を持っていても、大きく学んでかえってくる方と大して学ばずにかえってくる方がいます。それは違いは何に起因するのだろうと考えたことがあります。この問いに関するヒントは、「日本語が亡びるとき」という最近ヒットした本やそこで紹介されている夏目漱石の「三四郎」にあるように思います。日本の大学というのは、西洋の学問の輸入機関であって、西洋のコピーをすることが目的となってしまっていました。従って留学というのは、西洋の先進的なことを学び輸入するために行く人が多かったというのが現状であろうと思います。でも実はそのattitudeでは学ぶことが少ない。海外には海外の良さがある。日本には日本の良さがある。ぜひAさんには、海外の良さを学んで日本に輸入するというスタンスではなく、海外の良さを学びつつも同時に日本の良さを海外に輸出し、その組み合わせで新しい価値を作り出していくんだ、という気概を持って、仕事をしていただきたい。その方がきっと得るものが大きいように思います。
三つ目は、「新たなspringboard」という話しです。1年間のプログラムが終わったらぜひまたこの仕事に戻ってきたいとおっしゃって下さいました。私はこの言葉を大変うれしく思います。でも、今回Aさんは今までの経験をspringboardとして新たな道に飛び出す訳です。ぜひ、この1年のプログラムのゴールがまた今の場所に戻ってくるという志の低いものではなくて、この1年の経験を更なるspringboardにして、更なる新たなステップを作っていただきたい。"I shall return."という心持ちではなくて、"I shall (not) return."の心持を持ってがんばっていただきたい。その気概がこのプログラムの参加をより有意義なものにするのではないかと思います。
今まで本当にお世話になってありがとうございました。正直お別れするのはさびしいです。でも、人生におけるクロスロードは何回か訪れることがあります。ぜひまたどこかでお会いできる日を楽しみにしています。本当にありがとうございました。
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