Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

UC San Diegoのエコシステムとの付き合い方

最近今まで以上に日本の方から、「UC San Diegoと連携したいのだけれども、どことコンタクトをとると良いか」、というご相談を受けるようになりました。多くの皆さんに、UC San Diegoとのeffectiveは連携をしていただきたいので、個人的な見解をベースに、サジェスチョンをまとめておこうと思います。個別に相談いただいて、メールでお返事するのですが、こういった情報をブログにも掲載しておくことで、より繋がりが活性化すると思っております。僕自身が普段から交流の多いところを中心にご紹介していますので、それなりに偏りもあると思います。

なお、このご紹介は暫定的なもので、関係者の皆様から更なる情報提供や修正のご指摘をいただいた場合は、適宜reviseしていこうと思います。

 

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はじめに

UC San Diegoは西海岸に立地しており、太平洋の関係をとても重視しています。その中でも、日本へのフォーカスを明確に持っていて、おそらく米国の中でも最も日本との連携に積極的な大学と思っていただいて良いかと思います。その意味で日本にとっては大きなチャンスです。

その前提の中で皆さんにきちんとお伝えしておきたいことは、「イノベーションのレベル感」という話です。昨今、日米の大学のイノベーションを推進するレベルは、それぞれの国の平均をみると随分差が小さくなっていると思います。今起きているのは、日本の中で、レベルが高いところと、低いところの格差が大きくなっている、ということかと思います。ですから日本である程度の先端性を持っているところは、米国のイノベーションの水準ともそこまで変わらなくなってきています。その意味では、米国のイノベーションの仕組みを盲目的に信じることなく、本当に自分たちを求めている中身があるかどうかを事前に確認することが重要です。

例えばUC San Diegoにおいて、自分たちは「イノベーション」に関わっているとPRしていても、そこまでイノベーションに詳しくない組織も存在します。その状況の中で、日本の大学や企業の中にも、本来投資をしなくても良い投資をしてしまっているケースもあるように思います。

 

Office of Research Affairs and UC San Diego Tokyo Office

UC San Diegoの日本連携の中核にあるのは、Office of Research Affairsという本部の研究支援組織の、International Outreach Directorの和賀さんを中心とした日本連携の動きです。2016年7月には、UC San Diegoの東京オフィスも開設されましたし、日本でのアウトリーチのためのカンファレンスなども積極的に行なっています。何より、和賀さんを中心に、エンジニアリングやメディカルの分野で、日米連携のプロジェクトが多方面で生まれています。またエンジニアリングスクールの色々なプログラムとも連携を図ることができます。その一番の成功要因は、和賀さんご自身が、技術とイノベーションに関わる深い知見をお持ちだということだと思います。日本の方でUC San Diegoのエコシステムと連携したい、という場合にまずコンタクトしてみると良いのは和賀さんだと思います。このような国際連携のポジションに日本人が就任していることは色々な意味で心強いです。

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イノベーションを推進するビジネススクール

UC San Diegoのイノベーションを特徴づけているのはビジネススクールの存在です。私は、UC San DiegoにあるビジネススクールであるRady School of Managementの博士課程の卒業生で、現在客員助教授として毎年夏学期に授業を担当しています。それに加えて、最近は"Japan - Science, Technology and Entrepreneurship Program" (J-STEP)というエグゼクティブ教育部門内のプログラムのDirectorの兼務しています。

このRady School of Managementはもともと、大学内の科学技術の商業化をミッションの一つとして設立されました。サンディエゴに多数存在する理系ポスドクを含めたサイエンティストにビジネス教育を幅広くしており、その結果、大学を基盤としたイノベーションへの知見はとても深いです。

私がディレクターを勤めるJ-STEPでは、このRadyが蓄積したノウハウをベースに、日本へのプログラムの提供にフォーカスしています。大学なので、まずは教育プログラムからスタートして、今後、日本とサンディエゴのエコシステムを活用していくためのアクセラレーター的なプログラムに発展させていたきたいと考えています。

Rady School of Management教授で私のアドバイザのProf. Vish Krishnanはまさにこの分野の専門家で、いつも質の高いプログラムを提供しています。また日本関係の仕事も数多くこなしているので、日本のコンテクストもよくわかっています。更にRady School of ManagementのDean Robert Sullivanも、この分野の知見がとても深く、また日本への関わりも大きいです。今後Rady School of Managementでこう行った日本連携に関わる研究者を広げていきたいと思っています。

私自身、こういった大学を基盤としたイノベーション、エコシステム、大学発ベンチャー、技術経営などを専門にしておりまして、ビジネススクールにも深く携わっていますので、きちんとクオリティを担保した形で、プログラムを提供していきたいと思っています。逆にいうと、クオリティを担保するために、実際にお受けできるプロジェクトはそれなりに限定的になるかとも思います。また大学のイノベーションのエコシステムの中核は常にエンジニアリングスクールやメディカルスクールなので、ビジネススクールの役割というのはあくまで側面支援としての役割、とも思っています。いわゆる文系学部のイノベーションへの関わり方の一つのモデルがこのビジネススクールだと思います。

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UC San Diego Extension & Global CONNECT

続いて重要なのは、UC San Diego Extension & Global CONNECTに関するグループです。サンディエゴ地域には、CONNECTと呼ばれる科学技術を商業化するためのアクセラレーターが1980年代から存在しています。このCONNECTの成功事例に関する知見を世界に広めるために作られたのがGlobal CONNECTです。最近はGlobal CONNECT自体は規模を縮小しつつあるのですが、このプログラムのメンバーからのグローバル連携に関するアドバイスはとても有益です。現在のDirectorはMr. Nathan Owens。彼は日本に住んだこもあり、サンディエゴのエコシステムの活用にあたっての窓口としても最適です。更に、Global CONNECTやCONNECTのファウンダーでもあるAssociate Vice ChancellarのMary Walshok氏は、サンディエゴのイノベーション・エコシステムの最もキーパーソンです。サンディエゴのアイコンと呼ぶべき存在で、この地域で起きている色々なプロジェクトを熟知しています。ある程度の規模のプランがあって具体性があったら、彼女にはぜひ相談に行くと良いと思います。私も彼女には渡米前から頻繁に相談していて、もう10年以上の交流になります。

最近私は、「大学トップマネジメント研修」という日本の国立大学の未来の経営者(学長や副学長)を育成するプログラムを少しお手伝いしているのですが、その中でのUC San Diego研修に深く関わっています。このUC San Diegoでの1-2週間程度のプログラムのオーガナイズをMary Walshok氏にお願いしています。すでに1期生と2期生が受講しており、それなりに充実したプログラムになりつつあるように思っています。

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SING San Diego

もう一つ日本関係で重要なのは、林公子氏を中心としたSING San Diego  の活動だと思います。日本からきたポスドクやサイエンティストをサポートするグループ。日本人のサイエンティストが数多く集まっているので、 色々な情報が蓄積しています。代表の林さんがサンディエゴ地域のライフサイエンスの研究者に豊富なネットワークを持っているので、彼女に相談すると色々なことがわかります。SINGという組織自体はサイエンティストの集まりですので、この会の趣旨に合う人がコンタクトをとられた方が良いかと思います。一方で代表の林さんご自身は門戸を広く、献身的に相談にのって下さる方ですので、必ずしもSINGの趣旨に合わないときでも、林さんに相談してみると良いかと思います。

 

その他

その他、学内には、GPSと呼ばれる国際関係の大学院があり、ここにはJFITと呼ばれる日本研究のセンターがあり、日本向けのサービスも存在しているようです。私自身は、現在の活動はあまり把握できていないのですが、日本からスポンサーとして関わった方々に話を聞いてみると、おすすめのプログラムなどが把握できるのではないかと思います。

学外にはその他、CONNECT、Biocom、EDCなど、大学のエコシステムをサポートする組織がありますが、上記のキーパーソンとコンタクトを取れば必要に応じて繋いでもらえるかと思います。

 

まとめ

UC San Diegoは理系を中心としたキャンパスなので、やはり中心はメディカルスクール・ヘルスサイエンスとエンジニアリングスクールとなるのだろうと思います。その側面をエクステンションやビジネススクールが支えているという構図。その意味では、まずは和賀氏、林氏、Mr. Nathan Owens、Prof. Vish Krishnanらと相談してみると、色々な連携が進むことが多いのではないかと思います。