Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

レガリアにかける想い

WBSの学位授与式において、僕は青色のレガリアを来て、参加しました。そしてDeanの淺羽さんも同じ色のレガリア。多くの人から「どうして浅羽さんとお揃いのデザインなんですか?」、「色間違えてないですか?」、「教員用はこの色なんですか?」、「アメリカの大学でもこの色なんですか?」、「浅羽さんと牧さんはどういう関係なんですか?」など、色々な質問をいただきました。

 

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ガリアというのはもともと、中世のヨーロッパがオリジンの学者の正装のことをさします。学士、修士、博士それぞれデザインが分かれています。中世以降、博士取得者は、司祭や枢機卿のような明るい色のガウンを着る伝統が生まれました。このようなレガリアの文化はイギリスで発展し、その後アメリカの大学に引き継がれるようになりました。

アメリカでは、卒業式、学位授与式などの式典において、学者としての正装のレガリアを着ることが一般的です。そして、学士・修士・博士によってデザインが違うのと同時に、大学ごとにもデザインはバラバラです。

そして、学位授与式などで教員は、自分が所属している組織のデザインのレガリアを着るのではなくて、自分が博士を取得した大学のレガリアを着ることとなっています。ですから、色々な大学の出身者が集まる大学の教員の入場は、みんなバラバラな格好なので、さも仮装行列のようになります。そして、このみんながバラバラな格好ということは、それだけたくさんの大学の文化が融合している、ダイバーシティのあるコミュニティであることの象徴でもあります。もし教員がみんな同じ色のレガリアを来ていたら、その大学は人事がうまくいっていないと思った方が良いと思います。

なぜ、レガリアを着ることを大事にしているのか、それは大学が、世界最古のボローニャ大学の時代から、人類の知識を継承する役割を担って来ている、その知的交流の仲間に修了生をお迎えするのが、学位授与式の本来的な意味であるからです。

僕はWBSのような、ビジネススクールというプロフェッショナルスクールであるからこそ、学位授与式においては、アカデミアの価値を共有することはもっと強調されるべきだと思っています。それが、総合大学の中に根ざしているビジネススクールの本質的な強みだと思うから。

僕は、カリフォルニア大学サンディエゴ校で博士を取得した際にレガリアを購入しました。それはこれからも卒業式や学位授与式では着たいと思っていたから。

そして今回一人だけレガリアを着るととても浮いてしまうので、浅羽先生にお誘いして、浅羽先生にも母校のカリフォルニア大学ロサンゼルス校のレガリアを購入いただいて、一緒に着ましょう、ということになりました。ちなみに、カリフォルニア大学は10キャンパス合わせて一つの大学システムなので、レガリアのデザインも一緒です。

小さなこだわりかも知れないけれども、学位授与式で授与された修士号というのは、人類がボローニャ大学の時代から蓄積してきた、そして世界の学者が相互に繋がりなら発展させてきた知識を学んだことをcertifyするものだし、そのグローバルな知的コミュニティの仲間としてお迎えする、というものだったのだと思います。その思いを大切にしたいから、僕は会場で浮いていたとしても、レガリアを着ることを大切にしています。
別に仮装したいから(それもあるけど)、この格好をしているわけではないのです。

ということで、なぜ浅羽さんと二人でペアルックだったか、みなさま、ご納得いただけましたでしょうか。誤解解けましたか?

ぜひ修了生の皆さんに、世界の知的コミュニティの一員としてご活躍いただくためにも、アカデミアが大切にしている規範をご理解いただきたいと思いまして。

 

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