「良い研究とは何か」 -論文の評価手法-
はじめに
SFCの博士取得においては、査読付の学会誌の掲載がrequirementとなっている。自分自身の研究をまとめるためにも学会論文の投稿は良い機会となる。しかしながら、査読に通る論文をまとめることは決して容易ではない。他者の論文を読む際に、査読に通る良い研究・論文とは何か、を考えて分析することが良い訓練になると考えられる。ここでは、良い研究・論文とは何か、どのようにまとめるのが良いかについて、R・K・インによる「ケース・スタディの方法」に基づいて、分析のフレームワークをまとめる。
ケース・スタディの方法[第2版] (マーケティング名著翻訳シリーズ)
- 作者: ロバート・K.イン,近藤公彦
- 出版社/メーカー: 千倉書房
- 発売日: 1996/09/01
- メディア: 単行本
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この本日本語では随分昔に読んで、このメモも随分前にまとめたものですが、新しいバージョンが英語で出ているので早くもう1回読み直さなくては。。。
研究の評価は、「構成概念妥当性」、「内的妥当性」、「外的妥当性」、「信頼性」の4つにより構築される。
構成概念妥当性
構成概念妥当性(construct validity)とは、研究中の概念に関する正確な操作尺度の確立に関する評価指標である。構築しようとする概念に関する変数として適切なものが選択されているかどうかを検討する必要がある。例えば、犯罪の増加の研究の場合、警察の発表する犯罪尺度を利用するのは不適切な場合がある。なぜならば、ほとんどの犯罪は警察に報告されていない可能性があるからである。
内的妥当性
内的妥当性(internal validity)とは、擬似的な関係とは区別される、ある条件が他の条件をもたらすことを示す因果関係の確立に関する評価指標である。この指標は、ある因果関係を説明するための研究においてのみ必要とされる。事象xが事象yをもたらすということを想定した場合、実際には第3の事象zが原因である可能性を排除しなくてはならない。またケース・スタディの場合、事象を直接観察できない場合に、特定の事象がそれ以外の出来事の結果として生じたと「推論する」場合があるが、この推論が正しいかを慎重に検討しなくてはならない。
外的妥当性
外的妥当性(external validity)とは、研究の発見物を一般化しうる領域の確立に関する評価指標である。ある事例にあてはまった概念について、他の事例へどの程度あてはめることができるのか、検討する必要がある。そのために、同じ結果が生じるはずだと仮定した第2、第3の事例の追試を行う必要がある。追試の論理は、実験を行うときの基礎と同じものである。
信頼性
信頼性(reliability)とは、データ収集の手続きなど研究の操作を繰りかえして、同じ結果が得られることを示すことができるかどうかに関する評価指標である。ケース・スタディの場合は、そのプロセスにおいて活用した手続きや資料がきちんと保管されていることが重要である。ケース・スタディ・プロトコルやケース・スタディ・データベースを活用する。信頼性を確保する最良の方法は、できるだけ多くのステップを操作的にして、あたかも誰かがいつもあなたの肩越しに見ているかのようにリサーチを行うという気構えである。