Science, Technology, and Entrepreneurship

早稲田ビジネススクール准教授。研究分野である、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関することを中心に、日常生活で考えたことをお届けします。

ICPSR Summer Program

 

6月23日(日)から7月20日(土)までの4週間ミシガン州のアナーバーに滞在しています。University of Michiganが主催するICPSR Summer Programに参加するためです。ICPSRとは、Inter-university Consortium for Political and Social Researchの略で、社会科学の研究に必要なデータの提供や定量研究のトレーニング等を提供する組織です。このサマープログラムは、社会科学の研究者、大学院生が集まり、定量分析の手法について学ぶ機会が提供されています。今年で50周年ということで、名実共に米国もしくは世界で最も活発な定量分析を学ぶ場となっています。主に政治学の研究者が中心ですが、それに留まらず様々な社会科学の分野の研究者が参加しています。4週間のプログラムが2回(前半と後半に別れている)あります。理論だけではなく、統計ソフトウェアの使い方を含めた具体的なツールを習得できるところが特徴的です。

この参加費は会員組織所属の場合4週間で$2,200。決して安くはないのですが、大学に交渉したところ、参加費、渡航費、滞在費をサポートしてもらえることになりました。アメリカの大学院に身を置いて、自分自身が大切に育ててもらえていると実感しています。2年前にこのサマープログラムの存在を知って以来、是非参加したいと思っていたのですが、ようやく今年実現しました。

経営学の研究者としてキャリアを歩んで行く中で、経営学は経済学、心理学、社会学と隣接した研究領域ですが、僕自身はモデリング(ゲーム理論等)のセンスはあまりないので、特に計量分析を強みにしていきたいと思っており、自分のキャリアにとってもとても貴重な機会です。

せっかくの機会なので、必要は科目は一通りとろうとしたら、朝9時から夜6時過ぎまで、授業が連続になってしまい、ランチの時間もなく、授業が終わる頃には疲労困憊しています。

 

ちなみに今のところ1日のスケジュールはこんな感じ。

9:00-11:00 Maximum Likelihood Estimation for Generalizd Linear Models

11:00-12:00 Mathematics for Social Scientists II

12:00-13:00 Mathematics for Social Scientists III

13:00-14:30 Introduction to Computing

15:00-17:00 Regression III

17:15-18:15 Introduction to the R Statistical Environment

 

Introduction to Conputingは第1週のみ、Introduction to the R Statistical Environmentは第2週で終わりですが、来週以降、セミナーなどがその時間帯に入りそうです。

 

 

今回履修している授業を以下にご紹介します。

 

Regression III: Advanced Methods

シラバス / 授業ページ

ICPSR Summer Programの看板コースは、Regression IIという、OLSの基礎を網羅的に学ぶコースだそうです。最初はそのコースの履修を考えていたのですが、履修カウンセラーに相談したところ、さすがに僕のバックグラウンドではRegression IIは簡単すぎるということで、Regression IIIを履修することになりました。このコースでは、OLSのレビューを最初の2日間くらいでやり、その後は論文をまとめる際に必要となる色々な手法を学ぶ実践的な授業です。特にOLSを使うための前提が成り立たない場合の対処方法などが扱われます。StataとR両方をサポートしていて、最近Rをもうちょい深く使えるようになりたいと思っていたのでぴったりです。

 

Maximum Likelihood Estimation for Generalized Linear Models

シラバス

経営学の研究ではOLSを使わない分析も増えています。リニアを前提としないMLEを用いた分析手法は、大学の授業で一通りカバーはしていたもののイマイチ理解が浅かったので、これを機にレビューを兼ねて履修することにしました。この授業もStataとR両方をカバーしています。今携わっている研究プロジェクトでまさにMLEを活用しているので、そのデータ分析で直面していた課題について、この授業を通じて解決したいと思っています。

 

Mathemtics for Social Scentists II

シラバス

Regression IIやMLEの授業の理解を深めるために履修を勧められる数学。大部分が線形代数で後半に微分を少し。線形代数は割としっかり勉強したので、新しい知識はあまりないのだけれども、統計に必要な線形代数の内容に特化しているので、レビューを兼ねて履修している。良いリフレッシャーという感じ。

 

Mathematics for Social Scientists III

シラバス

MLEの授業の理解を深めるための数学。主に微分積分。大学レベルの微分積分は、独学で必要なところをカバーしているものの、きちんと体系的に学んだことがないので、これを機にきちんと押さえておこうと思い履修。今のところ知っていることばかりだけれども、後半はきっと色々学ぶのだろうと思う。

 

Introduction to Computing

シラバス

Stata、SASSPSSの使い方について入門者用に解説。Stataのセッションのみに参加している。Stataは一通り使いこなせるようになっているものの、体系的に学んだことはなく、基礎的かつ便利なコマンドを知らずにいる可能性もあると思い参加。実際に参加してみると思ったよりも自分が知らないコマンドが沢山あった。

 

Introduction to the R Statistical Computing Environment

授業ページ

Rの使い方について2週間でトレーニング。入門者向けだが2週間もやるので、随分色々なトピックがカバーされると思う。RをStataと同じくらい使いこなせるようになりたいので良い機会。